山とスキーとローゼンメイデン

登山、スキーについてのブログです。 また、ローゼンメイデンについての記事も書いています。

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ローゼンメイデン tale37

TALE37 / 硝子の靴

あなたの存在が、みんなをイライラさせるの


■ 気付いたら、学校に来ても足が震えることはなくなっていて

月曜日の朝、巴が迎えに行ったときには、ジュンはすでに家を発った後だった。
巴は、通学路の途中でジュンに追いつく。


 「早いね」

 「早起きにも慣れてきたかな……」


転校生についてジュンは巴に尋ねてみる。
クラスメイトに興味を持てるくらい余裕も出てきたのだろう、と巴は考える。

ジュンが女子生徒に興味を持つ・・・。


 「桜田くん…自分以外のこと、背負いすぎていた気がするから…」

と巴は言う。

 「だからそういうの…良い事だと思う」


そうじゃない、自分はただ、めぐの上履きがゴミ箱に捨ててあったから気にしているだけだ・・・とジュン自身は、そう信じているようだった。


それから巴は、転入初日に、めぐがジュンに会うためにこの学校へ来たと言っていた事実を伝える。
だが、ジュンには全く心当たりがない。

いずれにせよ、気がつくと学校へ来ること自体には抵抗を感じなくなってきた。
自分は学校に馴染んできているのだ、とジュンは思う。


ジュンは、もう重くなくなった教室の扉を開ける。



■ ・・・また?

教室に入ると、好意的ではないクラスメイトの視線がジュンに集まってくるの感じる。
周りの空気の質が変わっていき、居心地の悪い空間が自分を覆っていく。


  …また? なんで…

以前も体験した、あの拒絶的な空間だ。


 「アレ、めぐちゃんの上履きだよね」

 「なんであの人の机に」


これか・・・

前日、ゴミ箱の中にめぐの上履きを見つけて、そのままにもしておけず、とりあえずジュンは自分の机にしまっておいた。
それが見つかり、誤解を受けてしまっている。

うまく筋道を立てて事情を説明出来そうにない。

おまけにこの空気に飲み込まれると声がうまく出なくなってしまい、手足の自由までも奪われる。そうやって人間を縛り上げ、支配してしまう種類の空間なのだ。

何も言えずに黙って立っているジュンの横では、誤解や憶測がさらに広がっていく。


そこへ予鈴と同時に、めぐ本人が教室に入ってくる。
上履きではなく、スリッパを履いていた。

それを見たクラスメイトは自分たちの推察の正しさを確信して、めぐに事の顛末を話す。


話しを聞いていためぐだが事態を飲み込むと、それはジュンがやったことではなく自分がやったことだと話す。ジュンは、自分の手違いで捨ててしまった上履きを親切に拾ってくれただけだ、と。

 「助かっちゃった、ありがと」


それでクラスメイトたちの誤解も解ける。
疑ったことを、みんなはジュンに謝る。


体育館での学年集会では誰も助けてくれなかったし庇ってくれなかったけど、今回はめぐがいた、と思うジュン。



■ 少女のつくり方

次の休み時間、礼を言おうと思った時には、もうめぐの姿は教室にはなかった。
だが、ジュンはめぐの行きそうな場所に心当たりがある。

屋上だ。
ジュンは急ぎ、屋上へ向かう。


途中、廊下で皆人に出会う。
ちょうどジュンを探していたところだと言う。

 「ジュンに聞いてほしいことがあって…」

 「ちょっとゴメン、今急いでて」


ジュンは、しかし取り合わない。

 「じゃごめん、今度なっ」


走り去るジュンを見送る皆人は、何かに取り憑かれているみたいに目も虚ろで表情を欠いていた。
皆人が肩から下げているバッグには、何かのケースが入っている。

『少女のつくり方』だった。



■ 本当はシンデレラだって迷惑してたんじゃないかしら

見上げると屋上の扉が開いている。

 「やっぱりあそこだ」


階段を駆け上ろうとしたジュンは、不意にバランスを崩して転倒する。
脱ぎ捨てられた上履きが落ちていて、それに躓いてしまったのだ。


 「王子様オーディションがあったら失格ね」

と、階段の上から声がかけられる。

ジュンが見上げると、めぐが立っていた。
開いた扉から差し込む光を背にしている。逆光になって、表情を読み取ることができない。

 「硝子の靴に躓くなんて、ありえないもの」


ジュンは転んだ拍子に足を挫いてしまったらしく、起き上がることが出来なかった。


 「僕、君にお礼が言いたくて…」

みんなの誤解を解いてもらったことを本当に感謝している、
とジュンは倒れた体勢のまま言う。

しかしめぐにとっては、そんなことはどうでもいいみたいだった。


 「ねぇ上がってこないの? いい天気よ」

 「…ちょっと…立てなくて…」

 「ふうん」


教室にいる時のめぐとは、雰囲気が違ってみえた。


 「目を閉じて いいって言うまで」

とめぐが言う。

 「私ね…あなたのこと、ちょっとだけ詳しいの」


ジュンは目を閉じる。

素足で廊下を歩く時の、ペタペタという粘着性のある足音がする。
めぐは階段を降りている。


 「あのね、あんな靴本当はいらなかったの、ねぇ…どうして拾ったりしたの?」

めぐの声は無機質だった。


それからジュンは何かが体に乗ってくる圧迫感を感じ、目を開く。
めぐの足が押し付けられている。


 「あなたってミジメよね、そうして床に這いつくばって」

ジュンを踏みつけながら、めぐは言う。

 「でも悪いのはぜーんぶあなた自身のせいなのよ、わかる?」


めぐの言葉は辛辣だった。
それはジュンに向けられた言葉だが、同時に、どうしようもできないめぐ自身の運命を呪う言葉にも聞こえた。


 「あなたの存在がみんなをイライラさせるの」



■ あやつり人形


 「あなたの存在がみんなをイライラさせるの」

めぐの言葉に、突然感情が宿る。


しかしそれは、めぐを糸で操っていた者にとっては不本意なことだったらしい。
余計なことをするなと言うように、糸を手繰って注意を促す。


 「なに?わかってるわ、大丈夫よ、手加減なんかしないから」

と、めぐはその場にいない何者かに応えた。




次回は39号(8/25発売)掲載予定


【 今回の概要 】
ようやく学校に慣れてきたジュンに、クラスメイトたちの猜疑の目が向けられる。その窮地から救ってくれためぐに礼を言うため、休み時間に屋上へ向かうジュン。そこで、普段とまるで様子が異なるめぐを目にする。めぐは何者かによって操られていた。



【 今回の考察 】

今回は《TALE 33》同様、ローゼンメイデンのドールたちが全く出てこない回でした。
しかし純粋に人間たちの物語とは行かず、そこには何者かの思惑が見え隠れする。

ジュンが人形たちの世界から少しずつ離れようとしてるのに対して、皆人は渦巻きに飲み込まれるように(あるいは自分から進んで)人形の世界へ引き寄せられている。また、めぐは何者かの(文字通り)操り人形になっていることが判明する。


▼ 柿崎めぐ

◇支配の程度

めぐが何者かに操られていることが判明する。

その何者かは、黒い衣装を着込んで天井裏に潜み本物の糸を使ってめぐを操っている・・・わけではなさそうです。操り人形のような描写があるけど、もしかしたらそれさえも象徴的に描かれたもので、実際は違う方法で操られているのかもしれない。
いずれにせよ、めぐは操られている。

ただ、

 「あなたの存在がみんなをイライラさせるの」

とめぐが言ったとき、操り手がめぐに何か注意を促している。
その後のめぐのセリフから、「余計なことはしなくていい」というようなことを操り手は言っていると推測できます。

つまりそれは、めぐ本人の意志で「操り手」の思惑にそぐわないことを言ったということで、めぐは意識まで完全に支配されているわけではない、ということになる。

常にめぐとしての意識があるのかはわからないが(病院での「お父様」発言など謎も多い)、少なくとも、例えば《PHASE 43》の濃い霧に出現した蒼星石などに比べると、支配力は全然弱いようにみえる。


あやつり人形
PHASE 28にもあやつり人形の描写が出てくる、今回とは関係なし?


◇操り手の思惑

めぐはジュンにイライラしている。
そこからは、憎しみさえ感じさせる。

そしてめぐは、一度も会ったことのなかったはずのジュンを良く知っていると言う。

 「私ね…あなたのこと、ちょっとだけ詳しいの」


「操り手」がジュンのことを知っているということなのか、その「操り手」を通してめぐ自身がジュンを知っているのかそれはわからない(おそらく両方だと思う)。

ここでは、めぐの「操り手」が雪華綺晶だと仮定

雪華綺晶は、マスターの資質を持つ者を連れ去り養分を吸い上げる。
ところがジュンは自分で扉を開けて、人形たちの世界から離れようとしている。《TALE 36》での翠星石とのすれ違いが示すとおり、ジュンはマスターの資質を失いつつあるように見える。

傷つけようとするのは、再びジュンを家に引きこもらせて、マスターとしての資質を取り戻させようとしているのかもしれない。しかしそれなら、朝の上履き騒動に便乗して、めぐに泣きまねをさせれば済んだことのようにも思えます。

それで済まさなかったのは、雪華綺晶は悔しさから復讐みたいなことを考えているのかもしれない。まかない世界のジュンとの契約を邪魔されたことに対しての「お返し」を・・・ (自分との約束を反故にした水銀燈に対して、めぐを隠すという嫌がらせをしたみたいに)。

(もしそうだとしたら、金糸雀にも相当なお返しを考えていると思われる)



◇めぐが踏むのは自分の影

朝の上履き騒動は、ただめぐ本人の意志で、ジュンを庇ったのかもしれません。
めぐは操られてるだけで、めぐ本人はジュンを傷つけるつもりはないのかも。というのも、2人は元々接点があるわけではないですし。
でも、やはりめぐ自身もジュンに苛立っているのは確かだと思います。


 「あなたの存在がみんなをイライラさせるの」

このセリフは前述のとおり、めぐ本人の意志で発したセリフだと思うので。


これは、ただジュンに対してというより、めぐが(ジュンの中に見た)自分の影に言い放ったセリフのようにも思える。

不治の難病のせいで自分が他人の負担になり、両親の夫婦仲も悪くなり、母親は耐えられずに出ていった。


めぐの思い出
めぐは自分のことを、みんなにとってのお荷物という


そんなお荷物で惨めな自分自身に向けられた言葉でもあるかもしれない。
めぐの心の中で一番暗くて冷たい場所から出てきた言葉なのだと思う。


*:'゜☆.:*:' *:'゜☆.:*:'*:*:'゜*:'゜*:'゜☆.:*:' *:'゜☆.:*:'*:*:'゜*:'゜*:'゜☆.:*:' 

めぐは以前、病室に活けられた切花に対しても自分を投影して、その花たちを激しく憎んでいた。 《→ EXTRA TALE


 「生首にされて…根もないくせに、枯れるのを待つだけのくせに…まだ咲いているの」

 「死にかけの死に損ない、いいえ、うまく生きられないんだから、生き損ないって言った方が合ってるかな」

*:'゜☆.:*:' *:'゜☆.:*:'*:*:'゜*:'゜*:'゜☆.:*:' *:'゜☆.:*:'*:*:'゜*:'゜*:'゜☆.:*:' 


めぐにとって、水銀燈が死を受け入れて諦観している(詩文的で美しい)面の自分の影だとしたら、ジュンは生を諦めきれず這いつくばっても生きようとする(散文的で醜い)面の自分の影なのかもしれません。


  天使 = 水銀燈 = 現実と死を静かに受け入れる「綺麗な」自分

  生き損ない = 切り花 = カエル = ジュン = 生にしがみついて這いつくばりながら、本当は何かに期待している「惨めな」自分


          ~  ☆  ~  ☆  ~  ☆  ~  ☆  ~


この3人は、3面鏡のようにお互いを映しあっているのかもしれない。

蒼星石は言う。

 「ジュンくんと水銀燈…そして彼女のマスターめぐ、あの3人は奇妙な糸で結ばれている」
TALE 36

心の庭師であり、影を追い求め・そして怯えていた蒼星石だからこそ気が付いた、3人の関係かもしれません。


めぐにとってジュンは、自分の認めたくない面の影・・・

もちろん、めぐ自身はそんなことには気付かない可能性があります。
めぐが意識できるのは、(自分でも理由のよく分からない)ジュンに対する苛立ちと憎しみだけです。

めぐはどこから来ているか分からない自分の中の苛立ちに、後付けの理由をかぶせて、自分を納得させるかもしれない。
罪のない切り花たちを、生首にされてる癖に生きているという理由をつけて憎んだみたいに、徹底的に。
それが、結局は自分自身(自分の影)を峻烈に攻撃しているのかもしれないことに気づくこともなく。


逆に考えると、雪華綺晶がジュンへの「刺客」としてめぐを選んだ理由がその自他をも傷つける攻撃性にあるのだとしたら、雪華綺晶の目的が見えてくる気もします。




▼ 鳥海皆人の「少女のつくり方」

皆人の元に「少女のつくり方」が届いたようです。
そして、ジュンに見てもらうため(?)学校へ持ってくる(前日、ジュンが翠星石を学校へ連れてきたことはさすがに知らないと思うけど、奇しくも、憧れているジュンと同じことをしたことになる)。

鳥海皆人と少女のつくり方
皆人が学校に持ってきた少女のつくり方、定価設定は安定の1280円


◇皆人の持つ少女のつくり方の中身

今まで本編では、2シリーズの「少女のつくり方」が登場した。
いずれも、まかない世界のジュンの元に届けられた。

1),「少女のつくり方」・真紅のレプリカ
真紅が奪われた自分の本体を取り戻すために、緊急避難先として送り込んだレプリカ。
あくまで模倣品だが、作り手によってはローザミスティカを入れると仮の体として使えるようになる。
ただしリスクも高く、また1週間という期限もついていた。

2),「新・少女のつくり方」・蒼星石の本体
雪華綺晶が第2の「家」として使うために、まかない世界へ送り込んだ蒼星石の本体。
他のドールのボディを自分のものとして利用できるのは、幽体である雪華綺晶ならではのようだ。


皆人の元に届いた「少女のつくり方」は、今のところ正体不明。

ただ、上記の2つのうち1)のレプリカとは考えづらい。雪華綺晶と雛苺を除く全てのドールは自分の本体に収まっていて、リスクを冒してレプリカに乗り移る必然性が全くないので。
2)のドール本体のパターンだとすれば、皆人の元に送られて来ているボディは消去法で雛苺のものとなり、送り主は雪華綺晶、皆人を何らかの理由で狙っているということになってくる。その場合、真紅の中の雛苺のローザミスティカが気づくのかベリーベルが反応するのか、または、雛苺の友達のボス猫が気づくのか・・・。ただ、以前この方法を使った雪華綺晶は、みすみす蒼星石のボディを失ってしまったので、今回は何かひねりを加えてくると思われる。

あるいは、1),2)のどちらでもなく全く新しいパターンかもしれません。
(次回以降のお楽しみ!!)


桜田ジュン(大)と少女のつくり方
真紅に止められていた「新・少女のつくり方」に手を出そうとしているジュン




<TALE 37>
掲載: 週刊ヤングジャンプ 2011年34号 / 7月21日(木)発売
ページ数: 28ページ
登場人物: ジュン、柿崎めぐ、柏葉巴、鳥海皆人
備考: カラー扉



[ 関連ページ ]
前回 ローゼンメイデン TALE 36
ローゼンメイデン原作の全話レビュー


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ローゼンメイデン tale36

TALE36 / 絆

だ・・・誰か来たらどうしよう・・・


■ どんな所なんですかねぇ、学校


  だ・・・誰か来たらどうしよう・・・

  俺は、みんなに見せつけたいけどね


翠星石が知っている学校は、そんな少女マンガの舞台としての学校だった。
そこでは日々、人間たちが心ときめくような生活を繰り広げている……に違いない。


まだ見ぬ学校に憧れを抱く翠星石。
その様子を見たのりは、ドールたちを学校へ連れていってあげるようにジュンを促す。


 「何でせっかくの日曜にまで、学校に行かなくちゃ……」

そう渋ってみせるジュンだが、結局、翠星石をバスケットに入れて学校へ向かう。
さすがに一人を連れてくるのが精一杯だった。


 「まだですぅ? この中きゅうくつで…」

 「日曜でも部活の奴らとかいるんだぞ…」


ジュンとしては、人形を人目に晒すわけにはいかない。
外の世界は、ドールにとってあまり居心地の良い場所ではないように見える。


それでも、翠星石は幸せそうに笑った。



■ 何想像してんのかしらないけど、多分違うぞ

学校の教室は、少女マンガで見た景色とそっくりだった。
机や椅子がたくさんあって正面に黒板があって、カーテンが風にそよいでいた。

そして、ジュンと翠星石の他には誰もいない。

 「二人きり…ですね…」


学校は、翠星石にとってはお気に入りの少女マンガの舞台であり、憧れの場所だった。
と同時にジュンが、今は毎日通っている場所でもあった。

翠星石にとっては憧れの非日常空間が、ジュンにとっては自分の身を置くリアルの世界なのだ。

  成長した子どもはお人形遊びをやめて、扉のむこうに駆けていくものですね
  それはわかっているんです、でも


翠星石の中でいろいろな想いが交錯する。


突然、廊下から人の話し声が聞こえる。
この教室に誰かが入ってくるかもしれない。


 「隠れるぞ!」

と、ジュンは慌てる。


  だ・・・誰か来たらどうしよう・・・
  俺は、みんなに見せつけたいけどね


翠星石は、少女マンガの一幕を思い出す。
しかし、ジュンの方は誰かに見せつけようとするどころか、翠星石を隠すことに必死だ。


日曜日、特に用もないジュンが、教室で人形と一緒にいるところをクラスの誰かに目撃されることは、好ましいことではない。ちょっと困ったことになる。

せめて翠星石だけでも隠そうと、ジュンはゴミ箱の蓋を開ける。


 「まさか、そんなトコロに翠星石を…」

 「ごめん、ちょっとの間だから」

 「ふざけんなですー!!」



■ まるで、ほかの何かに出会ってしまったかのような…

 「昨日は何かあったの?」

翠星石とジュンが学校へ行き、のりも出かけたあとで、真紅は蒼星石に尋ねる。
どこかうわの空のように見える、と真紅は言った。


 「鋭いね」

蒼星石は素直に認める。
そして9秒前の白で、水銀燈とめぐ、それとジュンの間で過去に起こった出来事を見せられたと告げる。


 「水銀燈とそのマスターには、僕が思っていた以上に確かな絆があった」

蒼星石は言う。

 「めぐ・・・鍵を握るのはあの少女」


それから、自分のローザミスティカは水銀燈に借りているものであるから、自分の命は彼女のために使うつもりでいるという決意を、蒼星石は打ち明けた。

多分、翠星石には知られたくないことだった。


 「嘘は下手だから…君には正直に話してみたよ」

そう言う蒼星石も、水晶の棺に入ったジュンの姿を見たことは伏せておく。



■ 人間と人形

話し声と足音は、ジュンたちのいる2年6組の教室を通り越えて遠ざかっていく。
このクラスの生徒ではなかったようだった。


 「とりあえず、一難去った…」

ジュンは安堵の息をつく。
手には上履きが握られている。

上履きはゴミ箱に入っていた。
柿崎めぐの名前が書いてあり、ジュンは咄嗟に拾いあげてしまったのだ。

なぜゴミ箱に転入生の新しい上履きが・・・。


すすり泣くような声がする。
ジュンは掃除用具入れのロッカーに隠した翠星石のことを思い出し、急いで扉を開け、外に出す。

 「ゴメン…ゴミ箱よりはマシだったろ?」


そう言うジュンだが、翠星石よりも手にしている上履きに気を取られ、何かに想いを馳せているようだった。
翠星石は表情からジュンの考えていることを感じ取ってしまう。

同じ教室にいるのに、ジュンと翠星石とでは立っている場所が違うし、見える景色も違うのだ。
そしてなにより、ジュンは人間であり翠星石は人形だった。


カーテンは、相変わらず風にそよいでいる。


 「許さんです」

 「どうしたら許してくれる?」


それでも、二人は絆で結ばれている。


 「詫びとして帰りに、マカロンタワーおごれです!」

 「うーん…まぁいいか」

 「えっ…ほんとにです?」




次回は34号(7/21発売)掲載予定


【 今回の概要 】
登校を再開して最初の日曜日、ジュンは翠星石を学校へ連れて行く。憧れの学校に胸を膨らませる翠星石だったが、そこは人形の居場所などない世界であることを改めて思い知らされる。一方、桜田家に残った蒼星石は、自分の決意を真紅に打ち明ける。



【 今回の考察 】

今回は楽しいようで、少し悲しく切なくなるような回でした。

これまでは同じ世界にいて同じものを見ていたけれど、ジュンが外の世界に出ていくことで、つながっていた人間と人形それぞれの世界が、少しずつ離れていこうとしている、そんなことを予感させる回です。


▼ 翠星石の憧れる「人形と人間」の、理想と現実

110623_06.jpg


  だ・・・誰か来たらどうしよう・・・
  俺は、みんなに見せつけたいけどね

と描かれたマンガに、翠星石は憧れる。
でも現実には、ジュンは翠星石を隠す。

外を移動するときはバスケットに入れられるし、廊下で足音がしたらゴミ箱なり掃除用具入れなりに、なりふり構わず隠されることになる。


学校に人形の居場所はない。

ジュンが重い扉を開けて人形たちのいる家から飛び出して目指した先は、人形たちの居場所のない世界だった。


そして、ジュンは側にいる翠星石をよそに、上履きの持ち主である人間の少女に想いを馳せる。

以前、窓から図書館へ向かう巴とジュンを見送った時は、家の中と外、翠星石とジュンは別の世界にいた。今回は、同じ場所にいるはずなのに想いは通じない。

物理的な距離は言い訳に出来ない。


それが人間の成長であり、扉を開け飛び出していくということなのかもしれない。
翠星石も頭では分かっていることだったけど、今回は改めて実感してしまうという形となってしまった気がします。


翠星石


◇翠星石の理想は、めぐと水銀燈の関係?

今回の少女マンガのカーテンのシーンは、水銀燈とめぐが契約を交わす場面を思い起こさせられました (カーテンとシーツの違いこそあれ)。

めぐと水銀燈
水銀燈とめぐの契約シーン


めぐは水銀燈との会話を看護師さんに聞かれることを憚らないし、父親に水銀燈のことを進んで話そうともしていた。

  俺は、みんなに見せつけたいけどね


意外と、めぐと水銀燈の関係こそ翠星石の憧れなのかも!?
(それが、今回のめぐと水銀燈の扉絵の理由??・・・)



▼ 真紅と蒼星石

一人で抱え込もうとする蒼星石の様子に気づき、真紅は何があったのかと問う。
(アニメ・トロイメント第2話で、一人で薔薇水晶のことを抱え込もうとする真紅に気づき、問い質したのが蒼星石だったのを思い出します)

翠星石がいない時を見計らって、蒼星石に尋ねる配慮も真紅らしいです。
真紅は、翠星石がいては蒼星石も話しづらい内容であることは、なんとなく察しがついていたのだと思います。

ただ、蒼星石の異変に気付いていたのは真紅だけではない気はします。というのも、こと蒼星石に関しては、翠星石の方が敏感なので。
翠星石が自分の居場所がないと分かっている学校へ行ったのは、純粋に好奇心や憧れだと思いますが、それとは別に、蒼星石の態度から何かを察して、逃げたかったということもあったりするのかもしれません。


蒼星石は真紅に、過去の光景(水銀燈とめぐとジュンのこと)を見たと伝える。しかし、水晶の棺に眠るジュンの姿を見たことは伝えなかった。

今現在、唯一ジュンと正式な契約を結んでいる蒼星石は、契約していない真紅や翠星石に負担をかけさせないために、一人で背負い込もうとしているのでしょうか、やはり。



▼ 上履き

めぐの上履き
めぐの上履きがなぜかゴミ箱に・・・

制服や上履きは、なんというか学校の象徴であり、学校へ通うために必要な通行手形的な意味もある気がします (学校へ行くのを拒否していた頃、ジュンは自分の上履きの名前を修正して抵抗した《→ 序章・後編》)。

だから、上履きが捨ててあったことに、ジュンは過去の自分を思い出して、ちょっと不安を覚えたのかもしれません。
ジュンはまた、めぐがイジメられてるのかもと考えます。 

それと、「2-B」となっているのも気になります。

ジュンは、めぐの上履きを昇降口の下駄箱に戻してあげるのかな!?





<TALE 36>
掲載: 週刊ヤングジャンプ 2011年30号 / 6月23日(木)発売
ページ数: 28ページ
登場人物: ジュン、翠星石、蒼星石、真紅、桜田のり
備考: カラー扉



[ 関連ページ ]
前回 ローゼンメイデン TALE 35
ローゼンメイデン原作の全話レビュー


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