山とスキーとローゼンメイデン

登山、スキーについてのブログです。 また、ローゼンメイデンについての記事も書いています。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
ローゼンメイデン tale22

TALE22 / ひとつだけ

僕が僕の意志で、僕の力で変えてやるんだ


■ 生命を宿す時計

 「さあマスター、命令を――」

庭師の双子はジュンに、望んでいる方向を指し示すように求める。

ジュンは戸惑う。
元の世界に戻りたいとは願った。しかし、戻ってから何をしたいのか、自分でもまだわからない。


 「貴方の心のままを、ひとつだけ口にすればいい」

真紅は、ジュンに自らの気持ちと向き合うように助言をする。

 「考えて、答えを導いて」


ジュンは考える。
僕が本当に心から叶えたいと願うものは――

疎外感を味わっていたジュンは、世界そのものが変わってくれることを願っていた。
そして、雪華綺晶を巻かない世界に呼び寄せてしまった。
世界を変えて欲しいという願望は、多分、今でもどこかに残っているはずだ。

しかし……。


 「舞台だ、舞台を元通りにしたい」

と、ジュンは言った。

 「それが一番で、それが唯一だ」


ジュンは元の世界に戻って、劇団のみんなで作った舞台を、最後までやり遂げたいと思ったのだ。


 「…元ある形に、それがマスターの願い…」

双子の庭師、翠星石と蒼星石は力の向きを定める。
世界を元の姿に戻すという方向に。


 「いくよ、翠星石」
 「はいです」


  健やかに伸びやかに……
  芽を吹かせ、若葉を萌やし
  緑の梢を茂らせて…
  光の示す方向へ――!

翠星石が、夢庭師の如雨露で木製の時計に生命を吹き込む。
時計に生命の息吹が宿り、筐体から新緑が伸びる。


 「仕上げは頼んだですよ! 蒼星石」
 「うん」

双子の庭師の息はピッタリだ。
最後に、蒼星石が振り子に絡みついた新緑を切って仕上げる。


ボォーーン


 「動いたッ!! やったぞ!!」

大時計は、ついに動き出した。



■ 谷底

まいたジュンは、いら草で縄を結い続けている。
だが、どれくらい結ったのかは自分でもわからない。そもそも、深い谷底までの距離もわからないのだ。
ゴールの見えない作業は、人を消耗させる。

しかも、傍らにいるラプラスの魔は、ちょっかいを出してくる。

 「はてお耳を畳んでおいでか、坊ちゃん」


ジュンは、ラプラスの魔を相手にしないことに決めたようだ。
集中して作業を続けようとする。


 「ジューーーン」


突然、大声で呼びかけられたはずみで、ジュンは持っていた縄を離してしまう。
縄はそのまま深い亀裂に吸い込まれ、底まで墜落していく。


 「嘘だろおおお」

手を傷めながら時間をかけて作っていたいら草の縄は、こうして失われた。


 「やーーと見つけたかしらっ」

声の主は、金糸雀だった。


 「大変なのかしら!! 今すぐここから移動しないと…」
 「大変はこっちだ、ばかなりあー!!」
 「ば!?」


落としてしまった縄を嘆いてばかりもいられない。
だが、普段は傘を使って空の散歩を楽しむ金糸雀も、この亀裂に降りていく勇気はないようだ。

ふと、谷底で何かチカチカと光っているのが見えた。


 「あれは…人工精霊?」

谷底で、人工精霊がヨロヨロと飛んでいる。



■ 決意と拒絶

時計は動き出した。
しかし振り子の動きが、どことなくぎこちない。


蒼星石が何かに気がつく。

次の瞬間、白い茨が時計の中の暗闇から伸びてきた。
その茨に、蒼星石は絡みとられてしまう。

時計の中にいたのは、雪華綺晶だった。


水銀燈が羽を飛ばして茨を断ち切り、蒼星石を救う。
蒼星石のローザミスティカを正式に譲渡される約束になっているのに、雪華綺晶に横取りされるわけにはいかない、と水銀燈は言う。

 「蒼星石はもう、この水銀燈のものよ」

水銀燈は、時計の中の雪華綺晶に告げる。


 「約…束?」

と、蒼星石と水銀燈との間で交わされた取引きを知らない翠星石は言う。

 「ど…どういう事…」


なにか嫌な予感を覚える翠星石。


 「ちがう! 僕の人形だ」

そう言ってジュンは蒼星石に駆け寄り、絡みついた白い茨を振り払う。

 「今のところはまだ僕がマスター、だろ?」


嘘をついてまで翠星石を心配させまいとした蒼星石、彼女の行為を無駄にしないために、ジュンはことさらに蒼星石の所有権を主張した。

蒼星石もその心遣いに気がつき、自分のマスターの優しさを嬉しく思うのだった。


 「雪華綺晶! そこにいるな?」

時計の中の雪華綺晶に向かってジュンは言う。

 「よく聞け、僕はお前のマスターじゃない」


雪華綺晶は、マスターではないと断言されてショックを受ける。

 「マスター… なぜ…? マスター… 私は…貴方」

貴方の望むままに、世界を作り変えてさしあげたいのに…。
雪華綺晶は涙を流しながら、ジュンに訴える。


 「いらない」

ジュンは、きっぱり拒絶する。

 「もう、そんなもの欲しくない」


  誰かに与えられるんじゃ意味がない、
  僕が僕の意志で、僕の力で変えてやるんだ。


ジュンは上気して、自分の決意の固さを明示する。
雪華綺晶の誘惑を振り払うため、他の何かに憑りつかれてしまったような印象さえ受ける。


そして、泣いている雪華綺晶に言い放つ。

 「お前はいらない…!」




次回は15号(3/11発売)掲載予定


【 今回の概要 】
双子の庭師の力で、ついに大時計が動き出す。回復しきっていない雪華綺晶だが、それでもボロボロの体で世界が戻ることを阻止しようとする。ジュンのために世界を作り変えたいのだという。その申し出を、ジュンはきっぱりと拒絶する。



【 今回の考察 】
ジュンが自分の力で選択肢を選び取っていく、という決意をはっきりと宣言する。tale17で決意したことだが、今回口に出すことで、自分の中でも明確な形をとったに違いない。
それはジュンにとって大きな進歩かもしれないが、やや焦りすぎていて独善的すぎる観があるのも否定できない。phase41で、まいたジュンが図書館で巴から指摘されたことと同じだ。自分に救いを求める声に耳を傾けることを忘れている。雪華綺晶は、ジュンに助けを求めている。ボディ(=雪華綺晶にとっての居場所・自分の世界)を与えて欲しいと思っているのだ。自分の輪郭を保てず居場所がないと感じている雪華綺晶は、ジュンの世界を変えることで、そこに自分の存在を見出そうとしていたのかもしれない。
今のジュンが雪華綺晶を拒絶するのは当然だ。だが結果として、かつて自分が感じていた居場所のない感じや疎外感を、雪華綺晶に与えてしまったことになる。
巻かないジュンと巻いたジュン、巻かないジュンと雪華綺晶、新しいローゼンメイデンは、この対比を軸に展開されていくようだ。

まいたジュンと金糸雀が見た谷底で光るものは、雛苺の人工精霊ベリーベル。
真紅本体の中にある雛苺のローザミスティカに付き添っていたが、おそらく縄が落下してきたことに気がつき、外に出て来たのだろう。真紅本体救出の鍵になるのかもしれない。

翠星石は、蒼星石が嘘をついていることに気がついてしまったようだ。水銀燈と蒼星石の人柄から考えれば、2人の間に成立した取引きのおおよその内容は察知がついてしまうのだろう。
水銀燈が蒼星石は自分のものと言ったとき振り返る蒼星石の顔と、その次のコマの、おおよその事情を察してしまった翠星石の顔がなんとも言えない。ローゼンメイデンは絵の線が細かいから、表情の描写が秀逸だ。

◆金糸雀の呼び方
・かしら先生 ← まかなかった世界のジュン
・ばかなりあ ← まいた世界のジュン



【 その他 】
ローゼンメイデンコミックスとTシャツのお知らせ


ローゼンメイデンのコミックス第3巻は、2010年2月19日(金)発売。
ローゼンメイデン 3 (ヤングジャンプコミックス)(Amazon)

ローゼンメイデンのコラボTシャツ発売決定。カエルみたいな色。
サイト: MANGART BEAMS T



<TALE 22>
掲載: 週刊ヤングジャンプ 2010年11号 / 2月10日(水)発売
ページ数: 22ページ
登場人物: まかなかったジュン、まいたジュン、水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石、真紅、雪華綺晶、ラプラスの魔、ベリーベル

ヤングジャンプ 2010年 2/25号 [雑誌] (Amazon)



[ 関連ページ ]
前回 TALE 21
ローゼンメイデン原作の全話レビュー
関連記事
スポンサーサイト
100114_01.jpg

TALE21 / 双子の庭師
翠星石、気がついたかい




状況の整理 (TALE21開始時点)

現在、各ドールが持っているローザミスティカ(以下RM)の数と契約しているマスター

水銀燈: RM2個(水銀燈のRM、蒼星石のRM)、マスター(柿崎めぐ)
金糸雀: RM1個(金糸雀のRM)、マスター(草笛みつ)
翠星石: RM0個、マスター(なし)
蒼星石: RM1個(翠星石のRM)、マスター(まかなかった世界のジュン)
真紅: RM2個(真紅のRM、雛苺のRM)、マスター(なし)
    ┣ 仮ボディ真紅: RM1個(真紅のRM)…現在行動しているのはこちら
    ┗ 本体真紅: RM1個(雛苺のRM)…水晶の城手前の亀裂の底で眠っている
雛苺: RM0個、マスター(なし)
雪華綺晶: RM1個(雪華綺晶のRM)、マスター(オディール・フォッセー?、また、ジュンとの契約を望んでいる)




■ あるべき形に

 「対なる乙女である僕達は、二人が揃って初めて本当の意味を持つ」

と蒼星石は言う。

 「心の樹を司る『夢の庭師』として――」


翠星石と蒼星石、双子の庭師の力が揃って初めて、鍵となっている大時計の針を動かせるのだ。

しかし、今は翠星石のローザミスティカは蒼星石の体内にあり、翠星石はもの言えぬ人形になっている。
蒼星石と翠星石、二人が力を合わせるためには、どうしても水銀燈が持っている蒼星石のローザミスティカが必要になる、一時的にせよ。

水銀燈はこの理屈は理解するが、当然ながら蒼星石へローザミスティカを返すことを拒否する。


 「アリスゲームで蒼星石、貴女は負けたの。勝者は私…!」

と蒼星石に告げる水銀燈。


 「いいえ、それは違うわ!」

真紅が割って入る。そして水銀燈を弾劾するように言う。

 「蒼星石のローザミスティカは本来、翠星石に差し出されたもの、それを貴女が卑劣にも横から攫ったのだわ!」


 「…何ですって?」

真紅の指摘に対して水銀燈が過敏に反応する。


 「あら、気にさわって?お姉さま」

と、真紅はことさら、言葉の端に挑発と皮肉を込めたような言い方をする。


一触即発の雰囲気になった真紅と水銀燈をなだめたのはジュンと、そして蒼星石の次の言葉だった。

 「僕に君達のような強さがなくゲームに敗れたのは事実だ」

蒼星石は冷静に言い放つ。
真紅と水銀燈は、蒼星石の真意を測りかねる。


 「本意じゃないにせよ、返してほしいとは思わない…けれど」

蒼星石は言う。

 「あんな風に奪ったローザミスティカだ、痛むだろう…?ここが」


蒼星石は水銀燈に向かってそう言うと、自分の体を指差す。
簡単に君の身体になじまなかったんじゃあないかい?

水銀燈は否定出来ない。一時期は、鞄で眠ることも出来ないほどの拒絶反応が出ていたのだ。


言葉を詰まらせる水銀燈に対して、蒼星石は一つの提案をする。

 「これは取引きだよ、君のその傷みを失くしてあげよう」



■ 取引き

蒼星石が提案した取引き内容とは、次のようなことだ。

時計を動かす一瞬のためだけに、水銀燈は一時的に蒼星石にローザミスティカを返す。それが済んだら、また、水銀燈に蒼星石のローザミスティカを戻す。しかも、その時は蒼星石が了承して、正式に自分のローザミスティカを水銀燈に譲渡するという。

 「どう?悪い話じゃないだろ?」


もちろん悪い話ではない。水銀燈にとっては願ったり叶ったりの条件と言える。蒼星石のローザミスティカを手に入れて以来、ずっと水銀燈を苛んで来た横取りしたという事実への後ろめたい気持ちと、安眠もままならない頑固な拒絶反応から解放されるのだから。

逆に、蒼星石自身には利が少ない。しかし、蒼星石はあくまで混んがらがった事態が収集されて整理されることを望み、なによりマスターであるジュンを助けることを望んでいる。そのためなら、身の犠牲さえ厭わないという雰囲気がある。
それに、水銀燈と取引きするためには、多少(というか相当)の赤字決算は覚悟しないといけないのだろう。


 「取引き…ね、ふん…それで“あるべき形に”ってわけ…」

水銀燈はうまい話にすぐには飛びつかず、罠が隠されていないか探るように尋ねる。

 「かと言って、裏切らない保障は?」


蒼星石は言う。

 「僕は嘘が好きじゃない」



■ 迷子

一方、まいたジュンも真紅の本体を救うべく奮闘していた。
棘で手は血だらけになっていたが、それでもいら草で縄を結い続ける。


 「いつぞやも、そうして指を傷めておいででしたな 坊ちゃん」

横からラプラスの魔が茶々を入れてくる。

 「あの時は乙女の右腕だけでしたが今度は全身…ともなれば伴う痛みも更なるものでしょう」


さてどこまで耐えられますやら。

単なる嫌がらせなのか、どこかへ導こうとしているのか、相変わらずラプラスの魔の言動が目的とするところは不明だ。

しかし、ジュンは迷うこともなく、いら草を編み続けるのだった。
今はただ、真紅を救い出す道を一直線に歩き続ければいい、困難があるにせよ迷子にはならない。


その頃、まいたジュンの元へ向かっていた金糸雀は迷子になっていた……。



■ 双子の庭師

 「約束するよ水銀燈には嘘はつかないって ――だけど」

蒼星石は言う。

 「これから僕は一つだけ嘘をつく…――」


蒼星石の人となりは、水銀燈も良く知っている。
彼女が嘘をつかないと言えば、嘘はつかない。

水銀燈は、蒼星石に彼女のローザミスティカを返す……。


★━━…‥・ ★━…‥・ ★━…‥・

翠星石は目を覚ます。


 「翠星石、気がついたかい」

と、蒼星石は声をかける。


 「え…? ここは… …そ…蒼星石…!!」

翠星石は、生きている双子の妹を抱きしめる。

 「良かった…! 元に戻ったですね…」


蒼星石は、自分のローザミスティカは水銀燈が返してくれた、翠星石自身のローザミスティカは翠星石の体に戻した、と翠星石に告げる。
無論、自分のローザミスティカは一時的に返してもらっただけ、ということは伏せたままで。

ジュンと真紅は顔に感情を出さないように、二人のやりとりを見守る。


そのあとで、蒼星石は翠星石の頬をつねり、

 「あんな無茶は姉妹同士でも許されない、二度としないとお父様に誓って」

と、自分を復活させてくれるためにとった翠星石の無謀な行為を叱る。


 「どっちが姉?」

と、それを見ていたジュンが一言。


 「さあ…ひと仕事だよ翠星石」

蒼星石は本題を切り出す。

 「あの時計を動かさなきゃならない」


重なりあった二つの世界の流れを元に戻すために。
そして、それが双子で一緒に行う最後の仕事になるはずだ……。


 「じゃあ…元のまいた世界に…?」

と、水銀燈と蒼星石の間に結ばれた約束を知らない翠星石は無邪気に喜ぶ。

 「そうしたら、ずっと一緒にいられるですね?」


 「うん」

笑顔で答える蒼星石。
翠星石についた最初で最後の嘘だった。


 「さあマスター…命令を」


★━━…‥・ ★━…‥・ ★━…‥・



 いいえ…
 いいえ

 私のマスター…
 貴方は私のマスターよ…

 口惜しい…
 口惜しい…

 終わらせませんわ――




雪華綺晶はすべてを見ていた。
涙で目を腫れ上がらせて。




次回は11号(2/10発売)掲載予定


【 今回の概要 】
水銀燈が正式な譲渡を条件に、一時的に蒼星石にローザミスティカを返還する。蒼星石は自分の中にあった借り物のローザミスティカを翠星石本人に戻し、双子の庭師がここに揃う。その様子は、まだ回復していない雪華綺晶の知るところとなる。



【 今回の考察 】
今回TALE21で、水銀燈は一時的にしろ蒼星石にローザミスティカを返した。旧作で彼女が蒼星石からローザミスティカを奪ったのがPHASE21であり、同じ21話で対比を為しているのが面白い。

今回は、雛苺を除く全てのローゼンメイデンが登場。それと、二人のジュンとラプラスの魔。一話でこれだけ多くの人物が登場するのは初めてかも。

雪華綺晶は真紅や水銀燈、蒼星石たちのことを正確に把握して、迷子になっている金糸雀のことさえも捕捉しているけれど、まいたジュンが真紅の本体ボディを救出しようとしていることには気がついていない様子。注意がまかなかったジュンのほうに向いてるからなのか、ラプラスの魔のおかげなのか、いずれにしても、まいたジュンにとっては好都合だ。



【 その他 】
ローゼンメイデンのコミックス第3巻は、2010年2月19日発売。



<TALE 21>
掲載: 週刊ヤングジャンプ 2010年7号 / 1月14日(木)発売
ページ数: 26ページ
登場人物: まかなかったジュン、まいたジュン、水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石、真紅、雪華綺晶、ラプラスの魔

ヤングジャンプ 2010年 1/29号 [雑誌]



[ 関連ページ ]
前回 TALE 20
ローゼンメイデン原作の全話レビュー
関連記事
| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。