山とスキーとローゼンメイデン

登山、スキーについてのブログです。 また、ローゼンメイデンについての記事も書いています。

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  私、きれいなものが好き
  きれいって色々あるの



めぐ1


  大切なのは「触れてみたい」って感じる手
  手を繋ぐとその人のこと、ぜんぶわかってしまうの

  だから、ここに永遠を誓うのよ



めぐ2


  ねぇ、触ってもいい?
  さっきの痣《あざ》、もう一度みせて?

  触ってみたいの



巴


  あれはしるしよ
  約束を忘れないためのしるし

  きっと、わたしたち繋がってるの
  うんと深いところで・・・・・・






                 ◆       ◆       ◆


放課後の誰もいなくなった教室で、学級委員長の巴が転校してきたばかりのめぐにノートを見せている。 このクラスでの授業の進み具合を伝えて、分からない箇所があれば丁寧に教える。


■ ほら、私ずぅーっと入院していたでしょう、ガールズトークとかいいなぁって

めぐは突然、巴に好きな子はいるか尋ねる。

巴はあまりそういう話をしたくなかったし、めぐも本当に知りたくて質問しているわけではなさそうだった。
自分は長期に渡って入院していたから学校での生活をあまり楽しんだことがない、だから同級生との放課後の勉強会ごっこやおしゃべりに憧れていた、とめぐが話す。

こう言われてしまうと、巴も無下にはできない。
めぐと巴のガールズトークはこうして始まる。


                 ◆       ◆       ◆

■ お揃いの傷みたい、なにかの目印に見えてこない?

めぐは、巴の腕に剣道の稽古中に付いたという痣を見つける。
それから自分の点滴跡を指して、お揃いの傷みたいだねと言う。


  なにかの目印に見えてこない?


その言葉は、巴の深い部分に残滓した何かに触れる。

まるで、巴が意識できていない (あるいは無意識に気づかないフリをしている) 「痣」があることをめぐはちゃんと知っていて、その存在を暗に示しているみたいに聞こえた。 そしてめぐは、それが意味するもの、もたらすことになるものまでも正確に予見しているようにみえた。


                 ◆       ◆       ◆




ガールズトーク - ローゼンメイデン番外編 -



『アオハル “sweet号”』に掲載された短編で、登場人物はめぐと巴の2人だけです。

ローゼンメイデン本編を知らない読者にも配慮した内容で、初めから終わりまで、普通の中学生同士のおしゃべりが描かれています (途中で手を握りあったりしますが、それはそれとして)。
もちろん本編を知っていれば、2人の会話の端々から本編へ通じる伏線や言葉の裏に隠れている事象を感じとることができて、一層興味深く読めるのは言うまでもありません。

スピンオフ作品の「ドールズトーク」を意識してのタイトルだと思います。 もともと「ドールズトーク」というタイトルがガールズトークという言葉からもじったものだと思われるので、タイトル的に一周して、原点回帰・先祖返りしたと言えるかも!?


このガールズトークというタイトル、ここでの「トーク」は口で交わすおしゃべりに限らず、広義に「交流」「つながり・絆」を意味しているようです。



         ÷ ◆ ÷ ◆ ÷ ◆ ÷ ◆ ÷ ◆ ÷ ◆ ÷ ◆ ÷ ◆ ÷ ◆ ÷

◆ キーワード


■ 痣 《あざ》 ~ 「約束を忘れないためのしるし」 ~

めぐは、手に残る痣を指して「しるし」と言う。
痣については TALE 40 にも記述があり、そこで痣の意味するところはなんとなく分かると思います。

「それが契りってものなのよ たとえ一度約が解けたとしても、糸は簡単に消えたりしないわ。うっすらと…けれどもずっと残るのよ 痣みたいにね」 《TALE 40 より》


それにしても、約束を忘れないためのしるしであるという「痣(あざ)」。 その漢字が、「志(こころざし)」 と 「疒(やまいだれ)」 で成り立っているのは面白いです。


■ 手の交わり ~ 「心の一番深くを繋げる場所」 ~

手は一番深くを繋げる場所であり、だからここに永遠を誓うと言うめぐ。 めぐと水銀燈の深い絆を感じさせるセリフだと思います。

同時に、いま背後にいる雪華綺晶との結びつきは浅く、たまたま思惑が合致しただけの一時的な関係にすぎないと、めぐが宣言しているようにも聞こえます。
というのも実体を持たない雪華綺晶にめぐは触れることが出来ず、手を繋ぐことはできないので。 ともすれば、どこかでこの会話を聴いているであろう雪華綺晶への当て付けと取れなくもないです (物理的な体がないのは雪華綺晶本人のせいではないのですが)。

指輪をはめて契約を結ぶという他にも、ぜんまいを巻く、人形を作りながら呼びかけるなど、確かにローゼンメイデンでは手を通じて繋がることが多い気はします。


         ÷ ◆ ÷ ◆ ÷ ◆ ÷ ◆ ÷ ◆ ÷ ◆ ÷ ◆ ÷ ◆ ÷ ◆ ÷

◆ 物語中時系列


この「ガールズトーク」は物語中の時系列的に、 TALE 32 ~ TALE 36 の期間のどこかの話のようです。

「ガールズトーク」は2月14日発売のアオハルに掲載。 この時点で本編はTALE 43まで掲載済み、ちなみにTALE 44の載るヤングジャンプ2012年13号は2月23日発売。



TALE 36 は日曜日にジュンが翠星石を連れて教室へ行く話で、そこでゴミ箱に捨てられためぐの上履きを見つける。 TALE 37 は翌日の月曜日の話で、その日のうちにジュンがめぐに踏まれて病院に搬送されてしまう。
なので今回の話は、めぐが転入してきた月曜日 (=TALE 32) からその週の金曜日までのいずれかの日の放課後で、話数的には TALE 32 ~ TALE 36 の間ということになります。

さらに言うと、火曜日(TALE 33 ~ TALE 35)は除外できると思います。 この日、めぐは屋上にいたけど教室には来ていないし、巴も放課後は部活があったみたいなので。 ちなみにこの日は、桜田家でジュンと皆人のボーイズトークがありました。

    ・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
★ 金曜日である可能性

金曜日の出来事として確実なのは、めぐが教室のゴミ箱に上履きを捨てるということ (そして2日後の日曜日にジュンが発見して拾う)。 めぐは金曜日、おそらく一番最後に教室を出ます。
実際、この話の最後に巴は先に帰ってしまい、めぐが一人教室に残されます。 放課後に、めぐが居残って巴に勉強を教わったのはこの時が最初で最後だと思うので、金曜日説はなかなか有力なように思えます。 病弱の転入してきたばかりの生徒が、一人で最後まで居残るとは考えづらいので。

ただし、めぐが巴以外のクラスメイトと居残り勉強をやっているのなら、この金曜日説はあっさり崩れてしまいます。


というわけで、真相は闇の中へ・・・!!
くんくんスタンプ 74点
    ・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・




<ガールズトーク - ローゼンメイデン番外編 ->

   掲載: 『アオハル “sweet号”』
   ページ数: 12ページ
   登場人物: 柿崎めぐ、柏葉巴
   備考: コミック収録は現時点(2012年6月)で不明
    ┗ 『ローゼンメイデン 8巻』に収録 [2013/1/7 追記]


PEACH-PIT先生のコメント
PEACH-PIT先生のアオハル巻末コメント




『アオハル “sweet号”』 - ヤングジャンプ増刊号 -


アオハルsweet号表紙


   定価 600円 (税込)
   発行 2012年2月14日 発売
   出版社 集英社
   URL http://aoharu-yj.net/


  → アオハル “sweet(スイート) ” (Amazon)




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ローゼンメイデン tale42

TALE42 / 絶望と希望

そう、もう一人いたんだよ


■ 仲良しごっこはおしまい

鏡の中に手を差し込んだ水銀燈が掴んだものは、真紅の手だった。


 「真紅!?」

 「水銀燈? どうして貴女が……」


翠星石と蒼星石も、真紅の後に続いて現れる。
思いがけず、姉妹たちは一堂に会することとなった。


意識を取り戻した巴も加わり、それぞれが見聞きしたことを語り合う。

しかし欠けているピースが多すぎる。 寄せ集めた情報は断片的すぎて、組み合わせたところで何も完成しないし、どこにも導いてくれそうになかった。

行動に移るべき時のようだった。
水銀燈は、いつまでも続く方向性も生産性もない真紅たちの会話を 「パーティーのおしゃべり」 と揶揄して、一人で立去ろうとする。


好きで話し合いを続けているわけではなく、マスターを奪われてしまい行動を制限されてしまっているという事情もあるのだが、結局のところ水銀燈の言うとおり 「パーティーのおしゃべり」 にすぎないことには違いなかった。 そして、当の真紅たちにもそれは分かっていた。


 「仲良しごっこはおしまい」

と金糸雀も言う。

 「もう私も時間を無駄にしたくない」


もう時間を無駄にはできない。
普段は妹たちの話を聞き、あまり自分の意見を押し出さすことのない金糸雀の発言だけに、強い意志が感じられる。 みっちゃんを奪われたことで、少し焦りが生じたのかもしれない。

翠星石が、一人になるのは危険だと言って金糸雀を引きとめようとする。


 「私たちはいつだって、本当は一人だわ」

そう言うと金糸雀は傘を広げ、一人でその場から飛び去る。



■ 新しいドール

金糸雀にもどうすればいいか分からなかったし、みっちゃんの居場所すら掴めていない。
それでも行動を起こさなければ、みっちゃんに近づけないのだ。

金糸雀は、どこまでも続くように見える「ハリボテ」の病院廊下を、あてもなく飛び続ける。


 「ひとつ思い出したわ」

水銀燈が後ろから声をかける。
ただ一人、金糸雀を追ってきたのだった。


 「私が見たのは、目よ」

人形なのに、人形の目みたいではなかった・・・
水銀燈はみっちゃんの部屋で見た謎の人形について、思い出せたことを語って聴かせる。

それは大事な話かもしれなかった。 しかし、そんなことは今の金糸雀にはどうでも良くて、水銀燈が一緒に来てくれたことが嬉しかった。


そして水銀燈の方も話しかけるキッカケが欲しかっただけで、そんな話をするためにわざわざ追って来たわけではなさそうだった。
かつてマスターを追って鏡に飛び込み、nのフィールドを彷徨っていた水銀燈には、今の金糸雀の気持ちが良く分かるのかもしれない。


そんな二人の前に、見えない壁が立ちふさがる。
透明なガラスみたいな壁だ。 壁の向こう側も見えるし、自分の姿もうっすらと表面に映っている。


 「……? 水晶のカベ……」

雪華綺晶の世界で一度触れた金糸雀は、それがガラスではなく水晶であると確信する。

水晶の壁の向こう側で、開かないはずのハリボテの扉が開く。
扉の隙間からは 「目」 が金糸雀と水銀燈を窺っている。


「目」 の持ち主が扉から出てくる。 見たことのない人形だった。
金糸雀たちローゼンメイデンよりも頭1つ分小さく、動きもぎこちない。


 「オ姉さま・・・」

と、その人形は言った。



■ 4人寄れば文殊の知恵

飛び去った金糸雀を水銀燈が追っていったようだ。 おそらく二人は合流している。
あの二人が一緒なら心配はいらない、ひとまず安堵する真紅や翠星石。


問題は、自分たちのこれからの方針だった。

 「マスターが見つからないことには…」


と、さっそく最初にして最大の難関に突き当たってしまう。

なにしろ、真紅と翠星石と蒼星石の3人のマスターはジュンであり、そのジュンは今は雪華綺晶に囚われてしまっている。
ジュンを救い出すには雪華綺晶との衝突が避けられないが、そのためにもジュンの力が必要だった。


 「桜田くんを助けるにも桜田くんの力が必要って……ジレンマね」

と巴が言う。

その言葉が、真紅に何かを閃かせる。

 「ジュンを助けるためにはジュンが……」


翠星石や蒼星石も、ある人物を思い出す。
同一人物だけど、同一人物じゃない・・・もう一人のジュン。


 「そう、もう一人いたんだよ」



■ まあ若干頼りないのだけれどね

その日、ジュンは朝から慌ただしかった。

大学へ行く前に、アルバイト先の本屋に顔を出さなければいけないことになっていたのだが、あいにく、その朝は寝過ごしてしまったのだった。

そこへメールが入り、斉藤さんも今日に限って遅刻であることを告げる。


悪いことが重なる日は、本当に立て続けに面倒が起きるものなのだ。

 「なんか、今日はめんどくさいことが起きる予感がする・・・」


まかなかった世界のジュンのこの予感は、遠からず的中しそうだった。




次回は9号(1/26発売)掲載予定


【 今回の概要 】
期せずして一堂に会することになったドールたちだが、金糸雀と水銀燈の袂別により再び二手に別れて行動することになる。金糸雀たちは水晶の壁に阻まれ、そこで見たこともないドールと出会う。一方の真紅たちは、まかなかった世界のジュンに希望を見出す。



【 今回の考察 】

状況が整理されるような回でした。

金糸雀が旗幟を鮮明にして真紅たちの同盟から離脱、結果として水銀燈と与すことになった。 真紅・翠星石・蒼星石は、「まいた世界のジュン」を救出するために「まかない世界のジュン」に力を借りることにする。

そんな中で、雪華綺晶一派(?)の新ドール登場は衝撃的でした。


▼ 雪華綺晶人形の新しい姉妹たち

◇ 新しいドール

今回、ローゼンメイデン・シリーズではない、新しいドールが登場します。

雪華綺晶人形は皆人をお父さまと呼び、この新ドールを姉妹と呼んでいる。
ということは、新ドールは皆人が作った可能性が高いです。

新ドール
新ドールの背の高さは、ローゼンメイデンの中でも小柄な金糸雀の肩くらい


名前や動力源、好きな食べ物など一切不明。


また皆人が作ったとしたら、気になる点もあります。

・ボロボロすぎる
お父様デビューして間もない皆人が作ったにしては、随分と傷んでいる気がします。
洋服の破れや皮膚の状態からすると未完成品ではなく、長い年月を経て朽ちたように見えます (または、理科室で実験中に混ぜる薬品を間違えて、爆発させてしまった感じ・・・)。

※もっとも、nのフィールド内では時間など関係ないので経年劣化もアリだと思います。


・雪華綺晶人形とも似てない
当然ローゼンメイデンとは作りや材質が違いますが、姉妹であるはずの雪華綺晶人形ともかなり異なっている気もします (みっちゃんに鑑定して欲しい!)。

※雪華綺晶人形は元々ローゼンメイデンで、鳥海ファミリーにとっては謂わば「みにくいアヒルの子」なわけですので違って当然かもしれませんが。。 それに最初は自分の作風なんてないから、いろいろ試してる段階での作品ということなら、バラバラでもおかしくないです。

いずれにせよ、金糸雀のことを「オ姉さマ」と呼んたり、謎の多いドールです。


◇ 他の雪華綺晶人形の姉妹

金糸雀や水銀燈の様子を水晶越しに見ていた雪華綺晶人形の背後で、カタカタと人形たちが動いている。
おそらく、雪華綺晶人形の言う「姉妹たち」なのだと思います。

雪華綺晶人形と姉妹たち
雪華綺晶人形の姉妹たち?

「姉妹たち」は容姿や扮装は不明ですが、足には新ドール同様、ゲートルだか包帯のような布を巻きつけています。

これだけの数の人形を作るには、それなりの日数や材料が必要だとは思います。


◇ ・・・もう一つの可能性

雪華綺晶の世界では、実在するものと幻とを見分けるのが難しいです。
新しいドールや姉妹たちは本当は実在しない、という可能性も否定できません。



▼ まかなった世界のジュン(大学生)

久しぶりに登場したもう一人のジュン。
大学を辞めずに、通い続けているようです。

また、アルバイトも人間関係も悪くないように見えます。

まかなった世界のジュン


真紅は、口では「若干頼りにならない」などと言っているけど、本当は信頼しているのだと思います。

真紅の代用品として座長に返してもらった雪華綺晶人形は、きちんと部屋に飾ってありました。



▼ 水銀燈と金糸雀

二人でいる時の雰囲気が好きです。
姉妹であると同時に、自立した個人同士のコミットという感じがします。

この二人の活躍も楽しみです!





【 その他 】

書店用POPプレゼント企画

コミックス「ローゼンメイデン6巻」のPOPを抽選で5名にプレンゼント。
絵柄は、金糸雀(コミックス6巻の扉絵(表紙絵ではなく))みたいです。

「ローゼンメイデン6巻」のPOPを抽選で5名にプレンゼント


応募締切は、2012年1月5日(当日消印有効)。




<TALE 42>
掲載: 週刊ヤングジャンプ 2012年3号 / 12月15日(木)発売
ページ数: 27ページ
登場人物: 水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石、真紅、柏葉巴、雪華綺晶のような人形、謎の新人形、まかなかった世界のジュン
備考: 扉に書店POPプレゼントのお知らせあり



[ 関連ページ ]
前回 ローゼンメイデン TALE 41
ローゼンメイデン原作の全話レビュー


関連記事
ローゼンメイデン tale41

TALE41 / 別れ

私の新しい身体……拵えてくださっていたのですか?


■ まさか同じ病院で再会するなんて


 「やっと見つけたわ……めぐ……」


めぐは、思いがけない水銀燈の登場に驚き、それから一瞬だけ嬉しそうな表情をした。
しかし次の瞬間には、仮面のような微笑で感情を覆い隠してしまう。


 「久しぶりね、水銀燈」

めぐの声は中立的で、親しみも敵意も感じさせない。


 「えぇ・・・本当に」

と水銀燈は答える。


本当に久しぶりだった。

鏡の中に連れ去られためぐを追ってnのフィールドに飛び込んだ水銀燈は、まかない世界に迷い込み、真紅たちとも共同生活を送った。 その後も一人でnのフィールドを彷徨い続けて、ようやくこの場に辿りついたのだから。


それにしても、と水銀燈は思う。 長い旅の果ての再会にしてはあまりにお互いクールでドライだ。 もう少し感動的な一幕となってもいいと思うのだけれど・・・。

それは一つに、めぐがまるで「無駄な」旅のことを知っていて水銀燈を嘲弄し、再会に水を差したということもあるが、なにより雪華綺晶と一緒に行動しているめぐに水銀燈が不審を抱いたからだった。


 「そこに隠れているジャンクの末妹と馬が合ったということかしら」

水銀燈は少し憎々しげに言う。


 「白い悪魔は話が早かったわ」

いつまでも命を奪ってくれない黒い天使と違って、とめぐは言う。

 「こうして私に自由に動ける身体をくれたのよ」


ドールが媒介に力を与える・・・立場が逆転している。
それではまるで、めぐが人形になってしまったみたいだ。

そんなことが可能なのか、またそれが何を意味するのか、水銀燈には分からない。


 「解せないわね、それは契約?」

 「ふふ・・・違うわ、約束よ」



■ 病院のまやかしの廊下

ジュンの見舞いのため有栖川大学病院へ来ていた真紅たちもまた、どこまでも続くような無限の廊下の中にいた。


 「ここって、もうとっくに病院とかでなく……」

と翠星石は言う。

 「雪華綺晶のnのフィールドの中です」


ジュンが深くて暗い眠りに陥った理由はこれまで不明だったが、このような妨害をしてくる以上、雪華綺晶が関与していたことはもう疑いようがない。


今まで他のドールたちに気取られぬように密かに行動していた雪華綺晶は、もう自分の正体と動向を隠すつもりはないらしい。 おそらく、その必要がなくなったのだ。

計画が次のステップへ進み、ジュンにドールたちを近づけさせないことが最優先事項になったのだろう。

ドールを遠ざけようとしているということは、雪華綺晶はジュンの肉体を何かに利用しようとしているのだ。 もしかしたら、すでにどこかへ連れ去られてしまった後かもしれない。


それでも、この場であれこれ考えていても何も始まらない。
とにかく進んでみるしかなかった。


 「無事でいて頂戴、ジュン」

真紅は祈らずにはいられない。



■ 失われたもの

雪華綺晶ドールそっくりの人形がたくさん現れる。
人形たちは、水銀燈や金糸雀に襲いかかってきた。

糸で操られているだけの人形で、攻撃力はない。 巴を鏡の中に引きずり込むまでの時間稼ぎのつもりらしい。


 「ふふふ、久しぶりにすごい楽しい」

めぐは、水銀燈や金糸雀が戦う姿を見て楽しそうに笑う。

 「命を使ってできる遊びの方がよっぽど楽しい…」


必死に戦ってる水銀燈を前に、冗談を言っているようにも見えるし狂気の沙汰のようにすら見えるが、めぐは真剣だった。
とても真面目に、今、生きているという事実を楽しんでいるようだった。


命をかけた行為には、目に見える具象的な死がつきまとう。 死を手で触れられるような状況になって初めて、人間は生きている現実を強く実感することが出来る、というのは皮肉な話だ。

せっかく白い悪魔に自由な身体を――おそらくは期限つきで――もらったのに、学校は、実際は病院と大して変わらない退屈な場所だった。
看護師や医師の代わりに教師がいて、病気に蝕まれ囚われている病人たちの代わりに、システムにがんじがらめにされた生徒たちがいるだけだった (それに学校給食も、病院の食事みたいに不味かった)。

めぐは、そんな砂を噛むような思いをするために白い悪魔と取引をしたわけではない。


一方そのころ、そうやって雪華綺晶とめぐの注意が水銀燈たちに向いている間に、みっちゃんは巴を助けだそうと画策していた。

隙をみて、巴のそばに駆け寄る。


 「大丈夫? しっかりして」

みっちゃんの呼びかけに、巴は意識を取り戻す。


 「あなたは」

 「立てる? 今のうちに逃げましょ」


しかし、巴の体に巻きついた茨を引きちぎった時、雪華綺晶が気付く。
みっちゃんは最後の力を振り絞って巴を引き離し、金糸雀に託すが、自身は雪華綺晶の茨に絡み取られてしまう。

雪華綺晶にとっては、巴がみっちゃんに替わったところで、別に不都合はないようだった。


 「第二ドールのマスターでもかまいませんわ、いいでしょう?お父様・・・」

そう言うと雪華綺晶はみっちゃんを茨で捕らえたまま、鏡の奥へ潜っていく。
用を済ませたから、もう長居は無用と言わんばかりに。


 「じゃあ残念だけど、またね水銀燈」

めぐも雪華綺晶について鏡の中へ撤退していく。


 「みっちゃん!! 待ってて、今ッ・・・」

 「私はいいからっ、巴ちゃんを」


必死に追いかけてくる金糸雀に、みっちゃんは、今は巴を守って欲しいと言う。


雪華綺晶とめぐとみっちゃんを呑み込んだ鏡は、扉を閉ざす。 ただの鏡に戻り、入り口の機能を失う。


水銀燈と金糸雀は、気がつくと元の病院のエレベータの中に立っていた。
目の前の鏡は、何事もなかったかのように沈黙している。 今まで起こっていたことを示す痕跡は、なに一つとして残されていなかった。

ただ、世界からみっちゃんが消えてしまっていただけだった。



■ 人形師

薄暗闇の中を、一体の人形が歩いていく。
広い部屋には数本のろうそくだけが灯されている。


部屋の奥が人形師の作業場になっているらしく、そこだけが煌々と明るい。
作業場では、主らしき人物が台に向かって何かを製作していた。

人形がすぐ後ろにまで歩み寄っても、主は作業に熱中していて気がつく気配がない。


 「お父様、ただ今戻りましたわ」

人形は声をかける。

 「私の新しい身体…拵えてくださっていたのですか?」


声をかけた人形は、みっちゃんを捕獲して戻ってきたばかりの雪華綺晶だった。


 「お前が集めてくれたから材料は揃った」

だから、お前には他の誰も持っていない有機の身体を作ってあげよう・・・。


そう言うと、お父様は振り向いて愛おしそうに雪華綺晶を撫でるのだった。

ろうそくがお父様を照らし出す。
その人形師は、鳥海皆人だった。




次回は3号(12/15発売)掲載予定


【 今回の概要 】
ついに水銀燈とめぐが再会する。しかし雪華綺晶を間に挟んだ二人は、接点を見出せないまま袂を分かつ。一方みっちゃんは巴の救出には成功するが、自身は囚われて鏡の中へ連れ去られてしまう。みっちゃんを連れ去った雪華綺晶を待っていた人形師は鳥海皆人だった。



【 今回の考察 】

TALE 41は、驚きと衝撃の回でした。
人形師・皆人の登場やみっちゃん強奪、たくさんの雪華綺晶人形たちの出現。

そんな中で個人的には「めぐと水銀燈の再会、そして訣別」が、一番心に残りました。


[追記 2012年05月20日]
コミックス7巻で、このTALE41のサブタイトルが「別れ」と判明しました。



▼ めぐと水銀燈

まず、カラー1ページ目の2コマが印象的です。
めぐの表情変化がリアルです、自分の中の悲しい記憶が呼び起こされてしまったくらいに。。

一瞬の戸惑いと懐かしさや親密な記憶が蘇ったような表情から一転して、相手を牽制するような形式的・礼儀上だけの微笑の表情への変化。

めぐの表情カラー


例えば、よりを戻せない相手にばったり会ってしまった時などに出る表情みたいな、そんなめぐの心情がこの絵だけで伝わってくる気がします。


この絵で、めぐは水銀燈を振り切る決意をしていることをなんとなく感じました。
なぜそんなことをしなくてはいけないのか、理由はまだ分かりませんが。

ただそれは、根拠はないけど、水銀燈のためにやっている気がするのです。


  ★―――★―――★―――★―――★―――★―――★

めぐは「往生際悪く生にしがみつき、私欲のために親しい者を裏切る醜い悪役」 を自分に与えて、その役に陶酔しているように見える。

「天使にもたらされる美しい死を待つ薄幸の少女」 という物語を自分のために用意して、それを演じて陶酔していた時のように。

これは現実逃避ではなく、避けがたい死を受け入れるために、噛み付いてくる辛い現実の痛みを、少しでも和らげるために行なっている防衛的なものだと思う。 また、悪役を演じて陶酔する露悪趣味みたいなところは、水銀燈に似ていると思います。


そして、陶酔する一方で、一歩離れたところから冷静に自分を客観視して、自分のやっていることの意味を知っているもう一人のめぐも存在しているようにも思えます。

  ★―――★―――★―――★―――★―――★―――★


それとはまた別のところで、自由に動ける身体を手に入れた喜びと、思う存分に自由を謳歌してみたいという素直な気持ちも伝わってくる。


  「命を使ってできる遊びの方がよっぽど楽しい…」

というセリフは、そういうところから出た本音で、「悪役」を演じるために呟いたセリフではないと思う。


めぐは最初、学校に生きていることを実感できる場を期待していたと思います。 残念ながら学校は、フライドチキンの工場みたいに管理的で画一的で、そこの生徒たちも品質管理されている製品みたいに退屈なもの、とめぐの目には映ったようです (学校に期待し、失望するところは TALE 36 の翠星石を彷彿とさせる、その回の扉絵がめぐと水銀燈だったことも感慨深い)。

今回、戦闘を目の当たりにして、めぐは初めて生きているという実感ができたのだと思います。 だから、水銀燈が戦っているのに、あんなに楽しそうにしていたのだと思う (人が必死になって戦っているのを、無闇に面白がったわけではなく)。


めぐ

めぐと水銀燈、次に会えるのはいつ、どんな状況下でなのでしょう。



▼ みっちゃんと金糸雀

今回、みっちゃんは巴を助け出し、代わりに自分が雪華綺晶に捕まってしまいます。

勇気がいることだし、行動力と決断力も必要です。
普段は飄々としているけど、いざという時に見せるこういう英断は金糸雀と似ている気がします。


みっちゃん
連れ去られるみっちゃんは、最後まで金糸雀を気遣う


みっちゃんが連れ去られたことで、金糸雀は、今までなおざりにしてきたことと正面から向きあう必要に迫られる。

それは、アリスゲームとマスターの優先順位を決めること。


TALE 31 で、金糸雀はマスターは大事だけれど、ローゼンメイデンのドールが優先すべきことはアリスゲームであると、自分の考えを示しました。


迷う金糸雀


しかし、その後も態度を曖昧にしたまま、真紅や翠星石たちと連合を続けていた。
みっちゃんが連れ去られたことで、金糸雀は自分の態度と方針を鮮明にさせておいた方がいいのかもしれない。


今回はみっちゃんとめぐを助け出すため、金糸雀は腕を支え水銀燈に協力する。

金糸雀と水銀燈


これが金糸雀の出した最終的な答えなのか、それはまだ分かりません。


それに・・・
もしかしたら、どちらか1つを選ぶなんて必要もないのかもしれませんし。



▼ マスターたちと雪華綺晶

水銀燈がみっちゃんやめぐを連れ戻すために鏡の中に手を突っ込みますが、その時何かを掴む。
鏡から引っ張り出したのは、同じく有栖川大学病院にいた真紅です。

なぜ、真紅の手が水銀燈の手を握ったのか。
もしかしたら、真紅も同様に鏡に手を突っ込んで、何かを探していたのかも?
(というのも、いきなり空間から手が生えてきたら避けるか払うかして、間違っても、その手を握ったりはしないと思うので。。 あるいは、真紅たちが視界の悪い中を、手探りで進んでいた可能性もありますが)


真紅が鏡に手を伸ばして探すものがあるとしたら、それはジュンの身体だと思う。
ジュンも病室の鏡から、雪華綺晶に連れ去られてしまったのかもしれません。


今までマスターの精神ばかりを狙っていた雪華綺晶ですが、なにやら方針が変わり、身体も狙ってきているみたいなので・・・ (白い人形は黒髪で女の子のマスターを欲しているそうですが、「材料」はたくさんあった方が、なにかと好都合だと思いますし)。

こうなると、同じ病院にあるオディールや結菱氏の身体も心配になってきます。



▼ 鳥海皆人

ジュンの創作能力に憧れ、嫉妬すらしていたという皆人。

鳥海皆人


その夢がかなって、このたび、ついに人形師になりました!


ジュンがめぐに踏まれた日、皆人の持っていた「少女のつくり方」はまだ未開封(?)でした。
それから2、3日しか経っていないと思いますが、いきなり雪華綺晶の世界で「お父様」をやっている皆人。


果たして、皆人の身になにが起こり、これから何を起こすのか。
それは次回以降のお楽しみです!





【 その他 】

スピンオフ漫画 『ローゼンメイデン dolls talk(ドールズトーク)』 新連載!
「りぼん1月号」(集英社・2011年12月1日発売)より連載スタート

ローゼンメイデン dolls talk(ドールズトーク)

  漫画:かるき春
  原案:PEACH-PIT
  掲載:『りぼん』(集英社) → りぼん公式サイト


かるき春先生の描かれる
かわキュートなドールズのりぼんとフリルな日常風景を
楽しんでいただけたら嬉しいな~!と思います。
ももたねは原案という形で監修させていただきます。
本編では最近出番の少ない雛苺の活躍も!私たちも楽しみ♪です。
週刊ヤングジャンプ連載中の本編ローゼンメイデンともども宜しくお願いします。


(PEACH-PIT' days) http://blog.p-pit.net/?eid=1033888  より引用



コミックス 『ローゼンメイデン』 第6巻
2011年11月18日(金)に発売!

コミックス「ローゼンメイデン」6巻お知らせ




『りぼん』 2012年01月号 (Amazon)

ローゼンメイデン 6 (Amazon)





<TALE 41>
掲載: 週刊ヤングジャンプ 2011年51号 / 11月17日(木)発売
ページ数: 30ページ
登場人物: 水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石、真紅、柿崎めぐ、柏葉巴、草笛みつ、雪華綺晶の分身のような人形、鳥海皆人
備考: カラー3ページ(うち扉絵見開き2P)、サブタイトルなし



[ 関連ページ ]
前回 ローゼンメイデン TALE 40
ローゼンメイデン原作の全話レビュー


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