山とスキーとローゼンメイデン

登山、スキーについてのブログです。 また、ローゼンメイデンについての記事も書いています。

RozenMaiden newanime tale2

Anime-TALE 2 / 少女のつくり方

ぼくがいるべき場所は、きっとここじゃない


ローゼンメイデン第2話が放映されました。

原作に忠実なストーリーでありながら、音楽や演出による効果もあって、展開を知っていてもドキドキさせられました。 ミステリー&ホラーチックな回です!


今回の内容


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<あらすじ>

大学生になったジュンは、アルバイト先の書店で一冊の本と出会う。 その表紙を開いた時から、ジュンの元へ次々に人形のパーツが届けられるようになる。 送り主も分からないままに人形を作り始めるが、過去の自分を名乗る者からのメールを受けた日、人形のパーツはもう送られてこないことを知る。 ジュンの手元には、未完成の人形だけが残された。


    ・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・


今週から、「ぜんまいをまかなかったジュンの世界」 編突入です。


  ジュンは 「まきません」 を選ぶ。
  物語は立ち上がらない。
  彼はリアルの世界に、生身を晒していかなければならないのだ。



まきません
今回のジュンの選択は「まきません」、視聴者に分かりやすいようにボールペンの色を変える演出


原作で言えば 「TALE1」 全部と、あと 「TALE2」 の冒頭部分にあたります。
時間を割いて、1場面ずつが丁寧に描かれています。



桜田ジュン


「まきません」 を選択したジュンは、引きこもりを脱して大学生になっています。

中学生の時は 「引きこもりを脱する」 という自己実現の方法があり、ただその目標に向かっていれば前進できていたのですが、実際に自力で引きこもりを脱したのちは外の世界にも何もないことを知ってしまい、そこで目標を見失ってしまいます。 この大学生のジュンは中学時代より深刻にアイデンティティを欠損してしまっているように見えます。

そういう意味で大学生になったまかなかったジュンは、生まれながらにアリスゲームという過酷な宿命を背負わされているローゼンメイデンたちとは、より対比が鮮明になっています。

130712_09.jpg
歩き出したいのに、肝心の目標が見つからず苦しむ青年ジュン


「開けますか 開けませんか」

前回1話の最後でまいたジュンが扉を「開ける」という選択をしましたが、それに対応しているかのように、今回は本の表紙を「開く」ことで、まかなかったジュンがローゼンメイデンの世界へアプローチします。

                 ◆       ◆       ◆


もし 「まきますか、まきませんか」 のどちらにも答えず、そのまま紙を丸めて捨ててしまっていたら、今回の 『少女のつくり方』 との出会いもなかった・・・そんな気もします。



『少女のつくり方』


毎号集めると真紅が完成、創刊号はゼンマイが付いて1280円。

ジュンの元へ送られてくる、今のところは送り主が不明の雑誌。 ※ 作中でも (現実でも) 市販はされていません。

第2話は 「少女のつくり方」 休刊のお知らせが届いたところで終わります。 製作途中で休刊となったために、人形は未完成のままです。

ちなみに、現時点で足りていないパーツは 「頭部」「右足首部」 の2つ。

少女のつくり方 作りかけの人形
作りかけの人形、完成すると真紅になるらしいが……



斉藤さん


今回、印象的だったのが斉藤さんの演技です。

原作でも、その見事なまでのオーバーアクションぷりはジュンに感心されますが、アニメで声が付くとインパクト増大します!

演劇をやっているので普段から仕草がちょっとオーバーで、見る人に芝居がかった印象を与えるようです。

斉藤さん
将来有望な舞台俳優さん


何も知らない方が見ると、斉藤さんはなにか 「演技」 していそうなので 「裏がありそう」 みたいに思われそうですが、そんなことは全然ありません。

斉藤さんは、原作でも未だ下の名前は不明です。


店長


チャラいです、アニメだとチャラさ倍増です。
(演じてる声優さんが、店長の軽さといい加減具合を上手に演じていらっしゃいます)

ただ、店長も現代社会を生きる青年です。
彼なりに模索して今の生活を手に入れ、ささやかながら自分の領域をこの世界に確保したのだと思います。 ジュンは店長を否定しつつも、どこかそんな店長を羨ましいとも思っているかもしれません。

自分の世界の外にいる人間を認めようとしない点、また相手を下に見ることで領域を堅守しようとしている点も、自分の周りに壁を築いている今のジュンと似ている気がします。


店長は仲間内では人気ありそうですし、自分の領域内にいる仲間に対しては思いやりがありそうな印象です。


「私の叔父さんは船乗りだ」


船乗り叔父さんの絵本


途中、原作にはないアニメオリジナルで、絵本のような話が挿まれます。

私の叔父さんは船乗りだ。
魚を獲るために、世界中へ行くんだ。
その叔父さんが久しぶりに帰ってきた。

私は初めて港へ遊びに行って、
船にも乗せてもらった。
揺れる板の橋を渡るの。
甲板は少しなまぐさい。


今回はもう1シーン、アニメオリジナルの表現があって、やはりそこでも海が関係しています。

大学生のジュンが過去を振り返り、理想だった自分と現在の自分とが隔てられてしまっていることを痛感しているような場面です (ここは理想と現実の 「隔て」 を表現するために海峡という風景を出して、海によって隔てられた理想の地を、対岸から無力感に苛まれながら眺めている、と、とりあえずは解釈してみました)。

ジュンを隔てる海峡
海峡の場面、アニメオリジナルの表現です


「あの頃からやり直せたら」 というジュンのセリフが入りますが、その想いがnのフィールドとまかなかった世界を繋げた、みたいな感じにとれるように原作でも描かれます (ジュンが 「少女のつくり方」 と出会うのはこの直後)。


この海峡のシーンで女の子の笑い声が入るのですが、その声と「船乗り叔父さん」の絵本を朗読する声が同じようにも聞こえる気がしないでもなくもないです。 なにか繋がりがあるかもしれません (ないかもしれない)。


あと、ローゼンメイデン関連で船と聞いて思い出すのは、結菱一葉の双子の弟・二葉が乗っていた豪華客船ダイナ号と PHASE28 で描かれたデカルトの船と人形の話ですが、さすがにそれらは関係なさそうです。

無意識の海でジュンが見たもの
デカルトの乗った船、形からして時代が違います


また、世界中を駆け巡っていて時々帰ってくるという叔父さんが、世界を飛び回って骨董商を営むジュンやのりの両親を彷彿とさせられますが、それもあまり関係なさそうです。

いずれにしても、この絵本の続きはこれからもちょくちょくと本編に挿まれると思いますし、回が進むうちに自ずと謎も解けていくと思われます。


メール


過去の自分を名乗る者から送られてきたメール。

まいたジュンからのメール 原作版
雪華綺晶の力が強すぎて・・・うむ


ジュンは当然、イタズラか詐欺の類のメールだと疑う。
しかし、詐欺にしてはメールの内容が飛躍しすぎている。 突飛な話なだけに、逆にそこから緊迫感や真実味のようなものを感じとれる。 もちろん、そういう心理を突いた詐欺やイタズラである可能性は否定できない。

原作だと、このメールを受けとったところで第1話が終了となりました。



次回予告


第3話「真紅の目覚め」
放送日 : 2013年7月18日 (TBS)

http://www.tbs.co.jp/anime/rozen/story/index-j.html#story03



< アニメ TALE 2 「少女のつくり方」 >

・放映日: 2013年7月11日(TBS)
・登場人物: 桜田ジュン、店長、斉藤さん
・原作範囲: 『ローゼンメイデン』 TALE1,TALE2



[ ブログ内関連ページ ]
2013年の「ローゼンメイデン」新アニメ 7月よりTBS系列にて


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RozenMaiden newanime tale1

Anime-TALE 1 / アリスゲーム

まきますか まきませんか


ついに、ローゼンメイデンの新アニメが始まりました!

静かに流れるBGMと明度や彩度を抑えた色づかいが印象的な作品で、駆け足で展開していく物語さえも、淡々とした雰囲気に包み込んでしまうように感じられました。

まずは何より、丁寧に描かれたローゼンメイデンの登場人物たちの動く姿を見られることが嬉しいです。


今回の内容


今回のアニメTALE1 は原作 『Rozen Maiden(旧シリーズ)』 のダイジェストで、全7巻(全46話)を25分に凝縮したものです。

ダイジェストと言っても本筋の要約というよりは、登場人物紹介を主眼としているみたいに感じました。
7人のドール、全員の顔見せがあったのも良かったです。


  ジュンはゼンマイを巻く、
  すると、彼の運命と世界は動き出す。



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今回のジュンの選択は「まきます」


今回は来週からの「本編」に備えての導入編なので、きれいな絵や音楽を楽しめばそれでいいと思います。
この回だけで、内容を理解しようとする必要は全然ないです (なにしろ原作は連載11年目を迎える長編ですし、それに対して30分の映像だけで伝えられることなんてごくわずかです)。


「まかなかった世界」 へ繋がるポイント


とは言え、せっかくなので 「まかなかった世界」 へと繋がるポイントも抑えておいた方が良いとは思います。

アニメTALE1 は30分のプロモーション映像ではありません。
やはり、れっきとした第1話として作られたからには、単に登場人物や作風の紹介のみならず、視聴者に把握しておいてもらいたいことも描かれていたはずです。


次回からスンナリ話に入るためのいくつかのポイント

※ これから本編でも回想などの形を使って描かれると思うので、ここに挙げるいくつかはネタばらしを含む可能性があります。

   赤色の文字・・・今回の話で描かれていたこと
   グレーの文字・・・アニメで描写はなかったけど重要だと思われること

  • ジュンが「まきます」を選ぶ
  • 蒼星石が斃れ、そのローザミスティカが水銀燈の手に落ちること
  • 雪華綺晶は実体を持たないアストラル体の人形
  • 実体のないままだと現実(物質)世界へ出てこられない
  • 雛苺が雪華綺晶に器を奪われ、真紅にローザミスティカを託す
  • 真紅もまた雪華綺晶に搦め捕られて、動きが取れなくなってしまう
  • 蒼星石のボディが消失すること
  • 水銀燈がめぐと契り、雪華綺晶がめぐを連れ去ってしまうこと
  • 全ての鏡が「nのフィールド」への出入口と成りうるわけではない
  • 最後、ジュンが自分の手で扉を開ける選択をすること


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ジュンが扉を開けたことで物語は大きく展開する、次回以降のお楽しみです

あと、真紅と水銀燈の仲が悪いこともちょっとミソです。


内容や演出に関して、その他


その他感想です。

演出については、特にラプラスの魔の使い方が上手いと思いました。
冒頭でいきなり、正装をしたうさぎが鼻歌を歌いながら手紙をしたため封蝋を施す様は、何も知らない視聴者の興味も引きつけると思います。
最後も上手く〆ていて、凝縮されたダイジェストを一気に観て混乱したかもしれない視聴者の意識を、次回へ向けさせるような流れを作れていたと思います (溢れた水を導くみたいに)。

金糸雀のほふく前進が遅くなっているところや、他の姉妹が窓ガラスを割って侵入してくる中、水銀燈だけがスマートな手品みたいに抜けるところとか、そういう細かい演出も面白いです。

ジュンの部屋に大きく貼られたくんくんポスターの演出も気が利いています。

くんくんポスター
くんくんも今夏に新シリーズが開始です! (もちろん作中で)


BGM


アニメ旧シリーズと同じ光宗信吉さんが作曲されました。
映像の色調や絵の風合いに合った新しい曲が使われています。 アレンジ曲も入ってたかもしれませんが、わかりません。

水銀燈の桜田家襲来時の曲や、人形師ローゼンの工房から巴の家に映像が切り替わる時の曲などが好きです。


声を当てるのは、旧アニメシリーズと同じ声優さんたちです。

声のトーンが映像の風合いにマッチしています。
色調に合わせて声域を調整し、適切なトーンを選択しているのかもしれません (雪質や温度に応じてスキー板のワックスを変えていくみたいに)。 数年を経たので声質そのものの変化もあるかもしれませんが、それは好ましい方向への変化だと思います。

初登場した雪華綺晶の声、次回予告をした店長と斉藤さんの声も合っていると思います。



ちょっと気になったこと


予想以上に綺麗な絵でしたし、雰囲気もとても良かったです。
アニメの第1話、大満足でした。

一方で、気になった点もあります。

是非とも見たかった (見せて欲しかった) 場面が結構いろいろ削られてしまったのは残念ですが、それは尺がカツカツで仕方のないことです、どうしようもありません。

でもせっかく入れたシーンにも、インパクトをあまり感じられないというのが多かったです。 怖さや残酷さがなく、どこまでも平坦に中立的に 「事実」 のみが描かれた気がします。 なんというか、歴史の教科書を読んでるような淡白さを感じました。

無駄に残酷なのは自分も嫌いですが、アリスゲームはローゼンメイデンの根幹部分で、残酷さと悲劇性がないと物語自体の説得力を失ってしまう気がしたので、その点はちょっと気になりました。


もっとも今回はダイジェストで歴史絵巻をイメージして作られたのかもしれませんし、また、『りぼん』にも連載されている漫画なので幅広い年齢層が視聴する可能性を考えれば、それも仕方ないのかもしれません。


まとめ


原作を忠実に再現するめに 「余計な解釈を入れなかった」 ことで分かりづらい部分もあり、そこら辺は賛否両論あると思います。
ただ、これで新しいアニメシリーズの志向や方針がなんとなく見えた気がします。

満足できた1話ですし、これなら次回からの展開にも期待できると思いました!





< アニメ TALE 1 「アリスゲーム」 >

・放映日: 2013年7月4日(TBS)
・登場人物: 桜田ジュン、水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石、真紅、雛苺、雪華綺晶、柏葉巴、結菱一葉、桜田のり
・原作範囲: 『Rozen Maiden』 序章前編・後編, PHASE 1 ~ 43, EXTRA PHASE



[ ブログ内関連ページ ]
2013年の「ローゼンメイデン」新アニメ 7月よりTBS系列にて


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ローゼンメイデン tale43

TALE43 / 平穏な日常

お願いよ、力を貸して・・・


  二つの世界を結ぶ点は、もう消えてしまったんだろう

  それでも時々、あの初めてのメールを思いおこす
  そして、あれは夢じゃなかったと確かめる



ジュンは時々、違う世界の自分を想う。
もう一人の自分にぜんまいを巻かれた、ローゼンメイデンの人形たちを思い出す。

彼らは、ある日突然こちらの世界へやって来て、同じように唐突に立ち去った。


それは現実に起きた出来事のはずだ。
でも、たとえ夢だったとしても別に構わない気もする。



■ 「平穏な日常」

現実にしろ夢にしろ、この接触はジュンの意識に変化をもたらす強烈な体験となる。
この出来事の後、ジュンは以前よりもずっとうまく現実世界と関わり合っていくことができるようになった、ようにみえる。

手元に残った結果だけをみれば、違う世界から来たジュンや真紅たちが空想や無意識によって生み出された架空の人物、ということにしてしまっても問題ないはずだ。

むしろ全ては夢だったということにして、フタを被せてしまった方が楽になれる。
生きた人形が存在するというオカルトみたいな事実を認めなくて済むし、アリスゲームという面倒くさそうなことにも関わらなくて済むのだから……。


それでもジュンは、やはり現実に起こった出来事として受け止める。
この記憶が現実世界から離れていかないように、しっかりと結びつけておく。

もしジュンが忘れてしまったら、かつてこの世界に真紅たちが存在したことを知る者はいなくなる。 それは――真紅が言ったように――最初から存在しなかったのと同じことなのかもしれない。


そうなれば、あちらへ通じる扉が開かれる可能性は永遠に失われてしまうのだ。



■ 鍵

ある時、斉藤さんはジュンのポケットからはみ出すストラップに気づく。

 「なあにソレ、カギ?」


ゼンマイだ、とジュンは答える。
ジュンは、真紅が残していったぜんまいをストラップにして携帯電話に結び付け、普段から肌身離さず持ち歩いていた。


ぜんまいと謎の人形、この2つの(どこからかやって来て、こちらの世界に残置された)物体が、ともすれば夢とも見分けがつかなくなりそうなあの一連の出来事を、現実世界に結びつける役割を果たしてくれているようだった。

物質の持つ現実的な重みと固定された形骸は、曖昧で流動的な人間の記憶や想いを補ってくれるし、持ち主を励ましてもくれる。


この2つの物質が存在している限りジュンは真紅達の存在を忘れることはないし、いつの日かまた、向こう側へ通じる扉を開いてくれるかもしれない。

そういう意味でこのゼンマイは鍵なのだ。 斉藤さんが指摘したように。


 「いつかまた会えるだろうか、僕の人形たち」

ジュンは強くローゼンメイデンたちのことを想う。


その晩、一本の電話がかかってくる。



■ テレビ電話

ジュンは何かの音で目を覚ます。
いつの間にか眠っていたようだ。

それが着信音だということに思い当たり、携帯電話に手を伸ばす。


ジュンを呼び続ける着信音は、いつもと違って聴こえた。
脳がまだ覚醒していないせいかもしれないし、あまり使わない機能でかかってきたのかもしれないし、特別な場所から想像もしない人が、尋常ではない用事でかけてきたのかもしれない。

ジュンは電話に出てみる。
その全てだった。


まず音声が入り、映像が送られてくる。
画面に映しだされたのはローゼンメイデンのドールたちだった。 翠星石と蒼星石、そして真紅がいる。

真紅達が、どこかの領域からかテレビ電話を使ってジュンにコンタクトしてきたのだ。 テレビ電話?


事態は入り乱れ、現実と夢が混ざり合っているようだった。
ジュンはとりあえず現実的な質問を投げかけてみる。

 「今かけてる携帯はいったい誰の…」

 「桜田くん?」


人間の少女が映る。
中学時代にほとんど接触を持たなかったまかない世界のジュンでも、柏葉巴だとすぐに分かる。
携帯電話の持ち主は彼女なのだ。

でもなぜ。

 「な…何で…? 柏葉と真紅たちが一緒に? まいた僕は?」


ジュンは、ますます混乱した。



■ 失われる「平穏な日常」

真紅が会話を引き取り、自分たちの置かれている状況を手短に説明する。

まいた世界のジュンが雪華綺晶に囚われてしまったこと、ジュンは力をくれるマスターでもあるので、ジュンを助けるためにはジュンの力が必要であるジレンマに陥ってること、つまり今頼れるのは(まかなかった)ジュンだけであること。

 「お願いよまかなかったジュン、力を貸して…」


ジュンはもちろん承諾する。
真紅の頼みだったし、なにより自分自身を救い出すために。

扉は開かれ、世界は繋がったのだ。


そこで電話の映像と音声が乱れる。
ノイズが混入する。

真紅たちの他にも、違う世界からこの世界に干渉しようとする者がいるのだ。


そして、ジュンの背後で人形が動き出す。




次回は13号(2/23発売)掲載予定


【 今回の概要 】
金糸雀と水銀燈が出会ったドールはニセモノ世界のホンモノだった。まやかし世界にいることの危険性を感じた金糸雀は、この局面の早急な打開を試みる。その頃、真紅たちはまかなかった世界とのコンタクトに成功するが、まかなかったジュンにも異変が忍び寄る。



【 今回の考察 】


▼ ニセモノ姉妹

まやかし世界で水銀燈と金糸雀が出会った人形は、雪華綺晶がローゼンメイデンを模して作った「姉妹」ということらしい。
つまり、水銀燈たちにとっては「ニセモノの姉妹」ということなる。


ニセモノ姉妹と本物姉妹


この人形は、実際は全然ローゼンメイデンの誰にも似ていない・・・ように見えます。
少なくとも姿形を本物に似せるつもりはなかったようです。

もともと実体を持たない雪華綺晶は、物質が作り上げる形状や容姿というものに興味がないのかもしれないし、うまく認識出来ないのかもしれません。

つまりこの人形の姿こそが、雪華綺晶がとらえて認識しているローゼンメイデンの姉妹たちの像なのかもしれない。


例えば、この「ニセモノ姉妹」には蜘蛛みたいにたくさんの手があり、襲ってくる。

これまで、雪華綺晶は一人で他の姉妹たちを相手に戦うことが多かった。

雪華綺晶vs他の姉妹連合
真紅たちにすれば、強大な力を持つ雪華綺晶に対抗するためのやむをえない共闘だったが……


「か弱い末っ子の自分を、姉たち全員が寄って集ってイジメた」という悲しみと恐怖の記憶が、雪華綺晶のローゼンメイデンの姉妹に対するイメージとなって、このたくさんの細い手がある人形を作り上げたのかもしれません。


そして、外の世界から遮断されて完全に雪華綺晶の主観だけで成り立つこの世界にあっては、現実社会で共有されている価値観や客観的事実などは意味をなさない。 イジワルな姉はニセモノであり(自分は本当の妹じゃないから冷たい仕打ちを受ける?)、雪華綺晶にとって都合の良い人形こそが本物の姉妹ということになる。


あるいはもっと辛辣で、「貴女たちはアリスという究極の少女を目指しているけれど、実際はこんなにも醜い存在」 という風刺と批難を込めた雪華綺晶から姉たちへ送るメッセージなのかもしれない。



▼ 雪華綺晶と「平穏な日常」

今回の話は2つの場面から成っています。

・まやかしの世界で水銀燈と金糸雀が出会った「ニセモノ姉妹」の話。 主観の支配する世界では「思い込み」だけでニセモノと本物が容易に入れ替わってしまう可能性もあるということ。

・まかない世界のジュンが、夢と現実の混ざり合うような領域で真紅たちからの電話を受けること。 結果、世界は繋がり扉は開かれる。

                 ◆       ◆       ◆




この2つの場面に共通しているのは、「本物とニセモノ」「現実と夢」といった対義的で明確に区分されいると思われる概念が簡単に混ざり合い、時に入れ替わってしまっているということです。


ニセモノは本物があって生まれてくるものですが、本物(という概念)もニセモノが存在して初めて成り立つ (本来的にモノが本物であることは当然で、「本物という概念」は必要ない)。

生と死も似たような合わせ鏡で、死がなければ生という概念が生まれないのかもしれません。
また、目が覚めなければ夢であると気づくこともないのかもしれない。

これらは片方の事象や概念を意識することでもう片方も認識することができて、その時になって初めて、それぞれの領域を確保・定義する必要が生じ、お互いを隔てる壁が築かれるのだと思います。


◇ 雪華綺晶

雪華綺晶は、この対となる概念の片方を致命的に欠損しているように見える。 つまり、本来は分かつべき概念の間に壁を築き上げることができないのです。
彼女は夢と現実の区別を付けることはなく、現実で叶わないことなら夢の中で叶えれば良いと考える。

物理的な器を持たない雪華綺晶は肉体に輪郭がなく、自分の領域というものをおそらくは把握できない。 空間と自分の境目をうまく見定めることができない。
そういう事情もあって、壁を作るという習慣が身につかなかったのかもしれない。


◇ 「平穏な日常」

壁を作れない雪華綺晶に対して、(「三匹の子ぶた」でレンガを積む末っ子みたいに)ひたすら外に対して壁を築いて来たのがまかなかった世界のジュンで、彼はまだ見たことのない自分の「限界」にまで想像だけで壁を作ってしまう。
それをまいたジュンに指摘されて、今度は意識的に壁を壊していくことにする。

ジュンが今まで築いてきた余計な壁を壊している間は、それでいろいろなことがうまく行くように見えていた。 壁を壊すことで世界が広がっていくのだから当然かもしれない。
今回の話では、世界を隔てる壁まで壊してしまう。 それによってもたらされるものが吉であるか凶であるかは、今後のお楽しみ・・・!


今回のサブタイトルは「平穏な日常」です。 それが失われようとしている回に「平穏な日常」というタイトルをつけるところは良いですね。

平穏ではない状態に移行して始めて「平穏な日常」というものを認識できる、といっているみたいで。


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<TALE 43>
掲載: 週刊ヤングジャンプ 2012年9号 / 1月26日(木)発売
ページ数: 27ページ
登場人物: まかなかった世界のジュン、水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石、真紅、柏葉巴、雪華綺晶人形、雪華綺晶人形の姉妹、斉藤さん、山口店長
備考:



[ 関連ページ ]
前回 ローゼンメイデン TALE 42
ローゼンメイデン原作の全話レビュー


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