
縦走 | 無雪期 | 北アルプス | 単独 |
□ 日程
◆ コース概説

八方尾根から取り付き、五竜や鹿島槍、針ノ木岳など後立山連峰の稜線上を南進、野口五郎、水晶小屋、三俣蓮華・双六の小屋を経て、最後は笠ヶ岳に登って新穂高温泉へ抜けるというコース。
この2年前に行なった「日本海の親不知から白馬・唐松岳」の縦走の続きということになります。
序盤の岩場通過時に悪天候と重なったが、秋雨の季節も終わっていて概ね好天に恵まれた。また、シーズンを終えた小屋もあり、静かな秋の山をゆっくりと楽しめる縦走になりました。
名峰を1週間かけて踏破していく、楽しさとやりがいのあるコースです。
▼ 一口メモ
行程前半は水場がない。
小屋は多いので、営業していれば水を購入できる。ただ、小屋が営業をしていなくて積雪もない場合、水が入手出来ずに死活問題になりそうだ。小屋の営業期間は、山行前にしっかりと確認を。
▼ 関連山行
▼ 今回の山行の全行程

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コースタイム
1日目
2日目
3日目
4日目
5日目
6日目
7日目 (最終日)
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この記事では、1~3日目の記録を書いています。
4~7日目の記録はこちら
→ 「後立山から新穂高温泉への縦走(八方尾根~新穂高温泉) ~ 後編」 へ
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1日目 / 八方池山荘 ~ 五竜岳 ~ キレット小屋
・唐松岳頂上山荘は営業小屋。営業期間は4月下旬~10月中旬。テント幕営地あり。水は売店で購入。トイレあり。
・五竜山荘は営業小屋。営業期間はGW期間と6月中旬~10月中旬。テント幕営地あり。トイレあり。売店あり。
・キレット小屋は営業小屋。営業期間は7月上旬~9月下旬。幕営地はない。水場なし(宿泊の場合、水はもらえる)。トイレあり。売店あり。
コース概説
アプローチ & 前泊
ゴンドラとリフト2本を使って、村営八方池山荘へ。
今回は、この八方池山荘で前泊する。
登山計画書もここに設置してあるポストから提出。
八方池山荘 ~ 唐松岳頂上山荘
所要時間:2時間30分八方池山荘を出てしばらくは木道が続く。
木道が終わっても比較的なだらかな樹林帯が続き、その樹林帯が終わり稜線が近づき視界が開けても、危険な箇所やキツイ場所は特にない。
八方池山荘から唐松岳頂上山荘まではコースタイムが3時間半程度と短く、街から北ア主稜の稜線まで上がるルートの中でも、最も楽なのがこの八方尾根だと思われる。
この日は天気が崩れてくることが予想されているので、早めに目的地のキレット小屋にたどり着きたい。
八方尾根は、体力を温存しつつコースタイムを稼げる。
唐松岳頂上山荘 ~ 五竜山荘
所要時間:2時間
正面に見えるのが五竜岳
五竜岳に向かって唐松岳頂上山荘を出ると、いきなり「牛首」と呼ばれる痩せ尾根を渡る岩場が始まる。
岩はやや脆い感じで、特に反対方向から来る人とすれ違うときは細心の注意が必要だが、しっかりした鎖が取り付けてあるし、足の置き場に困る場所でもない。
ここを抜けると、ハイマツの茂る広い尾根が始まる。
ひたすら歩くと、やがて五竜山荘に到着する。
そこで小雨が降りだす。時刻は10時半になっていた。
五竜山荘 ~ 五竜岳山頂
所要時間:1時間この日は天気が良くないので、この五竜山荘で宿泊するというのも選択肢の1つに入ってはいたが、まだ早い時間だし思ったより雨も弱いので、次のキレット小屋まで行けるだろうと判断。
同じ系列の経営なので、五竜山荘の受付でキレット小屋に予約を入れてもらう。
この時期なら飛び込みでも(素泊まりなら)宿泊可能だが、予約を入れておいた方が確実だし、キレット小屋のスタッフも助かると思う。無線で連絡をとってもらい、お礼を言う。
雨はこれから強くなる予報だったので、ゆっくりもしていられず、キレット小屋へ向けて歩き出す。
五竜山頂への道は最初はザレているが、高度を上げるに従ってガレてくる。ところどころにハイマツが生えている。
五竜岳山頂につく頃にはガスが一度切れ、青空が顔をのぞかせる。
山頂到着は12時。五竜岳は標高2814mで百名山の一座。

五竜岳山頂、眼下には黒部峡谷、谷を隔てて劔岳も時々垣間見えた
五竜岳山頂 ~ キレット小屋
所要時間:3時間20分五竜岳からの下りは岩稜が続き、鎖場やハシゴが連続する。
この日の核心部だ。

ところどころで3点支持を強いられるし、そのために腕や背筋にも負荷がかかる。妙に長く感じるコースだ。
ただペンキのマーキングがしっかりしているので、道に迷う心配はない。

岩場を越えていくと、やがてキレット小屋が見えてくる。
えぐり取ったような狭い鞍部にしがみつくように建っている小屋で、この日の最終目的地。
キレット小屋

ゴタテ縦走時、重要な拠点となるキレット小屋
キレット小屋には素泊まりで宿泊する。
他に宿泊客はなし。小屋には4名ほど従業員がいた。
宿泊者(もちろん素泊まりも)は、天水だが水をもらえる。この辺では水が貴重なので、大変ありがたい。
小屋には食堂があり、自炊室や乾燥室もある。宿泊は階段を登って2階。
荷物を整理していると、外では雨が本降りになっていた。
毎度のことながら、山行1日目は、特に疲れる。
2日目 / キレット小屋 ~ 鹿島槍 ~ 種池山荘
・種池山荘は営業小屋。営業期間はGW期間と6月中旬~10月中旬。テント幕営地あり(1人500円)、綺麗に整備されている。張り綱はベグを使用とのこと。トイレあり。売店あり。
コース概説
この日は鹿島槍を越えて冷池山荘に至り、さらにその先の種池山荘を目指す。
キレット小屋 ~ 鹿島槍山頂
所要時間:1時間30分朝から雨が降っている。
弱い雨だし、この日のルートは何回か経験済みなので行動は可能。
しかし、なかなか気が滅入る。夏山縦走の単独行は、つくづく自分の心との戦いだと思う。それでも雨具をつけて出発準備を整えれば、億劫な気持ちは消えてしまうから不思議だ。
小屋を出ると、すぐハシゴが始まる。
難コースの予感!と思っていると、岩場ぽいのはその最初の方だけだったりする。
とは言え、鹿島槍山頂まで急登が続き、体力は削られる。
ガスが切れず真っ白い世界を歩いていると、いつの間にか北峰の頂上直下に到着していた。
鹿島槍は百名山の1座で、2つのピークを持つ双耳峰でもある。
最初に分岐から北峰(2842m)へピストン、ついで吊尾根を渡って南峰(2889m)へ。南峰の山頂は少し広い。

それぞれの山頂、霧の中の南峰山頂は指導標やケルンのせいで墓地のように見えた
鹿島槍山頂 ~ 冷池山荘
所要時間:2時間鹿島槍の下りは、特筆するべきこともないハイマツの道が続く。
この日は、やたらと雷鳥に出会った。最初は雷鳥が姿を現すたびに写真を撮ってたが、そのうち飽き飽きしてきてしまうくらい、たくさんの雷鳥と出会えた日だった。

この日は雷鳥大量発生!
冷池山荘に到着する頃になっても、雨は相変わらずシトシトと降り続いている。
9月下旬の北ア稜線で雨に濡れると、手がかじかむほど寒い。ことさらに「冷池(つべたいけ)」という名前がしっくり来る。

冷池山荘の入り口
冷池山荘では、おしるこ(400円)を注文して15分ほど休憩する。
温かくて甘いおしるこのおかげで、相当気力と体力を回復できた。
冷池山荘 ~ 種池山荘
所要時間:2時間15分冷池山荘を出て冷乗越を過ぎると爺ヶ岳の登りに入る。
爺ヶ岳の中峰は頂上を通らずに巻いていくこともできるが、急ぎの旅でもないし体力にも余裕があるので、ピークを踏んでいくことにする。
ついでなので、南峰も頂上ルートを通ることにする。

爺ヶ岳・中峰ピーク。三等三角点もある
爺ヶ岳を下っていくと、やがてハイマツ帯の中に、綺麗に整備された礫の道が現れる。ガスで見えないが、種池山荘が近いのだろう。
そして間もなく、種池山荘が出現した。
種池山荘

テント場は小屋から2分ほど。
樹林帯の中にあり、地は成らされていて綺麗だ。受け取った札をテントに掛ける。テントの固定には石を使わずペグを使うように、とのこと。
トイレは、小屋のわきにあるものを使用。
小屋の情報によると、翌日は晴れるということだった。

種池山荘の広場のようなテント場
3日目 / 種池山荘 ~ スバリ岳 ~ 針ノ木岳 ~ 針ノ木小屋
・針ノ木小屋は営業小屋。営業期間は7月上旬~10月体育の日。テント泊は1人500円。トイレあり。売店あり。水場は30分以上離れている。販売水は200円/1L。
コース概説

この日は、半円を描くように稜線上を進み、針ノ木小屋を目指す。
特に困難で危険な箇所もなく、立山連峰を右手に望みながらの稜線歩きとなる。
立山黒部アルペンルートの大観峰やロープウェーから正面に見える山稜、それがこの日に歩くルート。
種池山荘 ~ 新越山荘
所要時間:2時間天気は予報通り、前日までと打って変わってピーカンだ。
テンションも上がり、足取りも軽くなる。

振り返ると、朝日を浴びる種池山荘がまぶしい
種池山荘を出てしばらくは樹林帯が続くが、間もなく視界は開ける。
岩小屋沢岳に到着するころには、360度の景観が楽しめる。劔岳を始めとする立山連峰が大きく、また北は五竜や唐松、白馬岳まで望める。

岩小屋沢岳のピークからは劔岳が大きく見える
南に目をやれば谷を隔てた向こう側に、光る人工物が確認できる。この日の目的地である針ノ木小屋だ。
ヘリコプターを使えば5分で行けそうな距離にある。ちなみに、蟻のように地面を歩いて行く今日これからのコースのタイムは7時間30分。
岩小屋沢岳から少し下ると、すぐに新越山荘に到着する。
山荘は既にシーズンを終了、小屋閉めした後だった。ここで軽く行動食を摂る。
ちなみに、種池山荘からこの新越山荘への道中は、熊が多いらしいので要注意です!
新越山荘 ~ 針ノ木岳山頂
所要時間:5時間30分新越山荘を越えると、いよいよこの日の本番が始まる。
針ノ木小屋の前には鳴沢岳、赤沢岳、スバリ岳、針ノ木岳が連なりアップダウンが続く。鎖場やハシゴはなく、ひたすら歩き続けることになる。
一つ一つのピークはそれほど大きくない。特に鳴沢岳から赤沢岳へはあっという間だ。
ただ、赤沢岳からスバリ岳を経て針ノ木岳への道、特に針ノ木岳の取り付きから山頂までは、この日の最後の登りでもあり一番の急登でもあるので、正直しんどかった。30kg以上のザックを背負っている場合は、途中で何度も立ち止まって息を整えることになると思う。

この日の核心は、スバリ岳と針ノ木岳への登り
とは言え、終始視界の開けた稜線を歩くことができ、何かとお世話になる黒部アルペンルートを、普段とは違った角度から見られるこのコースは楽しい。
途中で黒部湖が眼下に広がり、黒四ダムや遊覧船や大観峰、ロープウェーなどが一望でき、まるで箱庭を眺めているみたい気分になる。

立山連峰と黒部湖、黒部湖でけー!
針ノ木岳山頂 ~ 針ノ木小屋
所要時間:30分針ノ木岳山頂から鞍部にある針ノ木小屋への下りは30分ほど。

針ノ木岳側から見た針ノ木小屋
針ノ木小屋でテント泊の受付を済ませる。
繁忙期はテント場が埋まってしまうが、この日は他にテント客がいない。
段々畑みたいだが、唐松岳山荘のテント場より規模は遥かに小さく、テントを張るスペースも密集している。ここは地理的な制限もあって整備はできないようで、立体迷路のような複雑な様相を呈している。
また浮石も多いので、テントはなるべくなら上の方に張った方が良さそうだ。
テント場のトイレは下の方にある。トイレへ行くには浮石の上を歩いたり、スラブ状の岩の上を歩くことになったりする。雨で湿っている時や夜になってトイレに行く場合は、お気をつけて。
15分ほど雪渓の方に下っていくと水場があるが、今回は疲れていたので、小屋で水を購入。1リットル200円也。

テント場でコーヒーブレイク、遠くには槍ヶ岳も見える
翌日は、船窪小屋へ向かう。
崩落箇所もあり、気を抜けない行程となりそうだ。
【関連記事】
○ 続き
→ 「後立山から新穂高温泉への縦走(八方尾根~新穂高温泉) ~ 後編」
【関連山行】
→ 栂海新道から後立山縦走(親不知~唐松岳)
→ 上高地から黒部ダム縦走(上高地~赤牛岳~黒部ダム)
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