山とスキーとローゼンメイデン

登山、スキーについてのブログです。 また、ローゼンメイデンについての記事も書いています。

ローゼンメイデン tale34

TALE34 / 籠の中

でも行けないのよ、この先も現実なの


■ 柵の外の少女

振り向いためぐの顔に、ジュンは既視感のようなものを覚える。

 「この人どこかで…会ったこと…?」


しかし、どこかに埋もれてしまっている(あるいは存在しないかもしれない)記憶を発掘する作業の前に、やらなければならないことがあるようだ。

企てているであろう行為を、この女子生徒に思いとどまって欲しい・・・。


 「あの…僕…は…おとといまで不登校…で」

ジュンは話しかけてみる。

 「けど…みっともなくても…前進できてるんじゃないか…って…」


意図していない言葉が口からついて出てきているのを自覚しながらも、ジュンはめぐを勇気づけたい一心で、方向性を失った話を続ける。

めぐは少し振り向いて不思議そうにジュンを見つめ、それからまた前方に顔を戻す。

どうやら、見当はずれなことを言ってしまったらしい、とジュンは思う。


 「前向きだとか、前進しようがんばろうって」

めぐは、からかうように言った。

 「あの先生みたい」


それからめぐは、今度は勢いよく振り返る。

 「桜田ジュンくん!」



■ 目が覚めれば、どうせまたかごの中


 「私もあなたと同じ」

今度はめぐが話を始める。

   かごの中にずうっと閉じ込められていたのよ

   ここから一歩踏み出すと、違う世界に行けると思うでしょ
   でも行けないのよ、この先も現実なの

   鳥かごの外に出られたと思っても、違うの
   望む場所に飛んでいくなんて、ただの夢で


   目が覚めれば、どうせまたかごの中なの



それはめぐの魂から出た言葉だ、この子は本当の絶望というものを知っている、ジュンにはそう思えた。

また、それはジュンがこの日味わった、失望と挫折の心情にも合致していた。

ジュンは自分が抱いていた漠然とした不安や苦しみを、この綺麗で不思議な少女が、言葉を使って明確な形にして指し示してくれたような気がした。


めぐは柵の中に戻り、脱ぎ捨てた上履きを拾う。

 「ばいばい」


そう言うと、めぐは扉の向こうに姿を消した。



■ マスター達の捕われてる場所を探すんだよ

先にnのフィールドへ入っていた真紅・翠星石・蒼星石に、金糸雀も合流する。
4人のドールたちは、これからの行動の目的を確認をする。

 「みんなで雪華綺晶のアジトを見つけるんですっ」

 「マスター達の捕われてる場所を探すんだよ」


それから真紅が、みんな連絡を密にとりあって、単独で雪華綺晶と対峙する事態は避けるよう注意を喚起する。
夕方、再びこの場所に集合することも決めておく。

 「では行きましょう」


この時、金糸雀が何かを言いたげに口を開くのだが、結局なにも言わなかった。

ドールたちは、お互い連絡が取れる範囲で四方に散っていった。


4人のうち、最初に異変に遭遇したのは蒼星石だった。
途中で帽子を飛ばしてしまって拾い上げようとした時、「手」が伸びてきた。

体も顔もなく、それは文字通り「手」だった。
その「手」が蒼星石の帽子を拾ってしまったのだ。


「手」は奇術をみせたりなどして、どこかお道化た風でもある。
蒼星石はその様子から、ある人物に思い当たる。

 「ラプラスの魔…?」


その質問には答えず、「手」は一つの扉に蒼星石を導く。
他に手がかりもない蒼星石は、促されるままに扉を開けた。



■ 皆人の頼み

午後の授業が終わっても、屋上にいためぐのことがジュンの頭から離れなかった。

生徒がごった返す放課後の廊下でめぐの姿を求めてみるが、案の定、見出すことはできなかった。


巴が、ジュンの様子に気が付き声をかける。

 「何探してるの?」


ジュンは何でもない、と答える。
なぜか後ろめたさと煩わしさを覚えるが、その理由は自分でも分からないようだ。

巴が気にかけてくれるのを振り払うようにして、ジュンは家路につく。


 「ジュン!」

帰り道、皆人がジュンの姿を見つけ、声をかけてきた。

一見、屈託がなく無遠慮に踏み込んでくるようだが、それでいて踏み込んではいけない領域を心得ているような皆人に対し、ジュンも好感と信頼を抱いているにみえる。


 「折角ばったり会えたことだし」

皆人は話を切り出す。

 「ジュンに頼みがあるんだ」


皆人は、これからジュンの家に行き、ローゼンメイデンを見せてくれるように懇願する。




次回は26号(5/26発売)掲載予定


【 今回の概要 】
真紅達は捕われたマスターたちを助けだすため、nのフィールドのどこかにある雪華綺晶の世界を探す。一方、ジュンは屋上で出会っためぐのことが頭から離れないまま下校、途中で皆人に出会いローゼンメイデンを見せて欲しいと懇願されるのだった。



【 今回の考察 】

▼ めぐとジュンと雪華綺晶

・ジュンの既視感

今回、ジュンがめぐに覚えた既視感は、無意識の海で水銀燈の記憶に触れた時、めぐの顔を見たことに起因すると思われる。《→ PHASE 29》


phase29 無意識の海
ジュンは、水銀燈の記憶の中でめぐの姿を見た

ただし、無意識の海(=意識下)での出来事なので、ジュンがこのことを思い出せるかはわからない。


・めぐの言葉

めぐに雪華綺晶が憑いて何らかの干渉をしているのは間違いないが、その程度はわからない。
最初、めぐが例の人形を抱いて「お父様」と発したとき《→ TALE 29》はめぐの意識は残ってないと思ったけど、今回を含め、その後もめぐ本人を思わせる言動をとっている。

今回のめぐの言葉は、ジュンを絡めとろうとしている雪華綺晶の狙い通りの結果をもたらした観がある。雪華綺晶の策かもしれない。
しかし一方で、打算のないめぐ本人の心から出た言葉である気もする。

いずれにしても、めぐの言葉は結構ズシリと来ました。。



▼ nのフィールド

・蒼星石

蒼星石と秘密の部屋
蒼星石が見たもの (何かの植物のようにも見えるし、水銀燈の黒い翼のようにも見える)

「手」に導かれて、蒼星石は1つの扉を開ける。
そこで蒼星石は何かを目にするが、それが何かまだ分からない。


・手

nのフィールドで、蒼星石を導いた「手」の存在も謎です。
蒼星石は、ラプラスの魔ではないかと疑っている。

nのフィールドの謎の手

また、《PHASE 28》のジュンの記憶の中に登場した、透明人間みたいな「紙芝居おじさん(ローゼン本人?)」も彷彿とさせられました。

110414_04.jpg
PHASE 28で登場した「紙芝居おじさん」

いずれにせよ、謎です。


・金糸雀

今回、金糸雀が何かを言いかけてやめた。
金糸雀はアリスゲームこそがローゼンメイデンの本分で、マスターはあくまで力を得るための手段であるという考えを持っている。《→ TALE31

マスターを助けるためにドールが同盟を組むのは、本末転倒だと言いたかったのかもしれない。




【 その他 】

コミックス『ローゼンメイデン』第5巻
2011年5月27日(金)に発売!

コミックス「ローゼンメイデン」5巻お知らせ

・通常版
・特装版 … 宝野アリカさんとコラボした特別編を収録した別冊つき。特装版は第1巻以来。

この2種類が同時発売です。
特装版は入手困難になる可能性ありなので、早めのご購入を!


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<TALE 34>
掲載: 週刊ヤングジャンプ 2011年20号 / 4月14日(木)発売
ページ数: 24ページ
登場人物: ジュン、柿崎めぐ、柏葉巴、鳥海皆人、真紅、翠星石、蒼星石、金糸雀、手



[ 関連ページ ]
前回 ローゼンメイデン TALE 33
ローゼンメイデン原作の全話レビュー


関連記事
ローゼンメイデン tale32

TALE32 / 新しい朝

僕、こいつみたいになりたい――…


■ 今日の乙女座は1位だよ

 「行ってきます」


ジュンは、桜田家一同の声援と見送りを受けて家を出る。
学校に復帰する日を迎えたのだった。

ドアを開け、朝の街に足を踏み入れる。
久しぶりに感じる空気。

 「朝のにおいって、こんなだっけ…」


人々は、それぞれの目的地に向かっている。
ジュンを見咎める者はいない。
街では誰もが等しく匿名的で、しがらみがないように思われた。

そのことは、ジュンを安堵させる。

 「大丈夫、足だって軽い」


しばらく行ったところで、後ろから声をかけられる。

 「おはよう…桜田くん?」

 「柏葉…」


巴だった。
ジュンが学校へ通うことをやめてしまったあとも、顔を合わせ会話を交わしていた、ただ一人の級友だ。

通学路で会う巴は、図書館や自宅で会う時とは雰囲気が違ってみえた。
巴は当たり前のように、同級生と挨拶を交わしている。

 「柏葉、なじんでいるんだ。通学路っていう当たり前のこの空気に」


身近な友達である巴が自分の知らない世界と繋がっているという事実は、ジュンに疎外感を与える。

  僕だけが、違うんじゃないか?


ここはもう、学校という社会の入り口だ。先ほどの街みたいに見知らぬ他人同士の集合体で構成されている世界ではない、それぞれが名前を持ち顔を持って繋がっている、「よそ者」の自分にはまだ居場所がない場所だ、とジュンは感じる。

暗転していく世界…。

 「…桜田くん? どうしたの大丈夫?」


ジュンは、そのまま意識を失う。



■ 繭の中

目を覚ました時、見慣れない光景が視界に映る。
周囲は白い膜に覆われている。


近くで、話し声が聞こえる。

 「そう…校門の前で」

 「はい、とても気分が悪そうに」


 ああ…

ジュンは、自分の置かれた状況を把握する。


 最悪だ

意識を失って、保健室に運ばれてきたのだ。
復帰を決めた日に、自分の足で教室どころか、校門の中にも入ることが出来なかった自分を情けなく思うジュン。

 「帰りたい――」


突然、遮断するように引かれていた白いカーテンが開かれる。
カーテンによって作り上げられていた、ささやかな独立世界が外から開かれる。


 「ジュン!」

そう言って、皆人が入ってくる。

 「学校来てるって聞いたからさ」


先日、図書館で知り合ったばかりだが、屈託がない。

 「よかったよ、学校来てくれて」


ジュンは、断りもなしに自分の世界に入り込んできた皆人に対し、違和感や嫌悪感を感じていないことに気がつく。
とても自然に扉を開けて、繭の中に入ってきた。


おそらく皆人は誰とでも、こうやって自然に接することが出来るのだ。

  僕、こいつみたいになりたい――…


今度はジュンが、皆人を羨ましく思うのだった。



■ nのフィールドへ

その頃、桜田家で留守番をしていた真紅、翠星石、蒼星石の3人は、庭でお茶を飲んでいた。
そこへクッキーの匂いに誘われたのか、雛苺の友達だった猫が現れる。

クッキーを猫にあげる真紅たちは、しかしこれから出かけなければならないと言う。


 「そうですね、のりやジュンが出かけている間に」

 「nのフィールドへ向かいましょう」



■ 転入生

一方、教室では、この日転入してきた生徒の話題でもちきりになっていた。
学級委員長として巴が、転入生の少女に便宜をはかる。


 「新しい教科書、明日には届くって先生が…ノートは私のでよければコピーするから」

 「ありがとう、委員長さん」


転入してきた少女は、本当は中学2年生より上の年齢だという。
長期の入院のため学校へ通えず、女子校から転入してきた、と本人は言う。

そして、会いたい人がいる、と言った。

 「会いたい人?」


 「そう、このクラスの」

少女は答える。

 「桜田ジュンくん」


転入してきた少女は、柿崎めぐだった。




次回は15号(3/10発売)掲載予定


【 今回の概要 】
学校へ復帰する日、エールを送られて家を出たジュンだったが、通学路の途中で意識を失いそのまま保健室へ運ばれる。駆けつけてきた皆人に、ジュンは少しだけ元気をもらう。そしてその同じ日、柿崎めぐが巴とジュンのいるクラスに転入してきた。



【 今回の考察 】

いよいよ、ストーリーが動き出したローゼンメイデン。
前回のEXTRA TALEがワンクッションを入れる番外編だったので、今回はTALE31(前々回)の続きです。


▼ 人間関係

今まではドールと人間の関係が主に描かれてきましたが、今回、ジュンが外の世界に出ていったことで、人間関係も複雑になってきそうです。
以前とは別人となって登場し転入してきためぐ、ジュンの閉じられた世界を少しだけ開いてくれた皆人、巴、そして、その他のローゼンメイデンのマスターたち。

ここでは、TALE32(今回)が始まった時点での、人間の登場人物(マスター+皆人)同士が、どれだけ認知しあっているかを表にまとめてみました。推測は抜きで、本編での描写だけを判断基準としました(巴と皆人は同学年なのでお互いを知っているかもしれませんが、描写がないので×としました)。


○…面識がある(名前と顔を知っている)  △…名前だけ知っている  ×…名前も顔も知らない  
※…本来のめぐであれば他のマスターの名前を知らないはずだが、明らかに異変が起きていて、今回はジュンのことも知っていたので不明ということにしておきます。また、ジュンは無意識の海で水銀燈の記憶に触れた際めぐの顔を見ているが、意識下での出来事なので△とした。


 ジュン皆人めぐ†オディ一葉みつ
桜田ジュン
柏葉巴××××
鳥海皆人×××××
柿崎めぐ†×
オディール××××
結菱一葉×××××
草笛みつ×
背景色がは、さくら中学の生徒


参考
TALE28で、草笛みつとジュンが協力して描いていた図
・その他、本編での描写

110212_02.jpg
tale28で、みっちゃんとジュンが描いた図




【 その他 】

「ローゼンメイデン」イラスト&スーパードルフィーの展示!

 夜想ベルメール展part3
「ベルメールと日本の球体関節人形」展
http://www.yaso-peyotl.com/archives/2011/02/post_799.html


        2011年2月14日~3月14日
            於・東京の浅草橋




<TALE 32>
掲載: 週刊ヤングジャンプ 2011年11号 / 2月10日(木)発売
ページ数: 27ページ
登場人物: ジュン、鳥海皆人、柏葉巴、柿崎めぐ、真紅、翠星石、蒼星石、桜田のり、ボス猫



[ 関連ページ ]
前回 ローゼンメイデン EXTRA TALE
ローゼンメイデン原作の全話レビュー


関連記事
ローゼンメイデン tale31

TALE31 / 秘密

私たち……これでいいのかしら


■ ローゼンメイデンの本を探す少年

ジュンが、図書館でローゼンメイデンの本を探している少年に出会ったのは、午後1時のことだった。

その少年は、検索用の端末で人形に関する本を探していた。
ジュンが通っている中学校の制服を着ているが、顔に見覚えはない。
学年まではわからないが、少なくとも同じクラスではない。

その事実は、ジュンを安堵させる。


しかし、少年が検索している単語を確認したとき、ジュンの動揺は頂点に達した。
少年は、ローゼンメイデンに関する書籍を探していたのだ。

ジュンは驚いたはずみで、置いてあった缶を倒してしまい、少年に、中に入っていたお茶をかけてしまう。

 「うわっ、すみませッ…」


少年は別に気にしている風でもなかった。
ジュンは、お詫びに、ファーストフードの店で昼食をご馳走することにした。


ややぎこちないジュンに対しても、少年は自然体で気さくだった。

 「制服って雨に濡れてもヘンな匂いにならない?」


いつの間にか、普通の会話を交わしていることに気がつくジュン。


 「どこ中?」

ふと少年が尋ねてきた。

 「この辺だったらさくら中だけど… あ、俺はさくら中」


何気ない質問だが、ジュンが避けたいと思っていた話題だった。
しかし、答えないわけにはいかない。


 「僕も…」

 「うそ! 何年?」

 「に…2年…」

 「なんだ、じゃあ同級生じゃん!」


 「僕…ちょっと一年の頃から…ずっと休んでて」

ジュンは、しどろもどろになる。会話は望まない方向へと進み続けている。

 「…だから知らないと…思…」


あ、と少年は何かに思い当たる。

 「もしかして、桜田くん?」



■ 秘密会議

今日は、桜田家の庭にドールたちが一堂に会している。

 「頼んでた茶菓子は忘れずに買ってきたですか?」


 「そこは、使いぱしり乙女として抜かりないかしらー」

金糸雀は、持参した「カナリアサブレ」をみんなに配る。

 「さえずるおいしさ、『カナリアサブレ』!」


しかし、始まったのはお茶会ではなく「秘密会議」だった。


 「雪華綺晶は人形よりもマスターを狙うわ…」

まず、真紅が言う。

 「次に狙うとしたら…それは私たちのマスター」


 「そう…ですね…」

 「僕も…今のマスターも前のマスターも…両方救いたい」

翠星石と蒼星石も同意する。


 「確かに私たちは、アリスゲームを戦う敵同士よ…けれど」

真紅は続ける。

 「この目的のためだけにおいては、同志とも言えるのではないかしら」


先日、ジュンとみっちゃんは、お互い助けあってドールたちを守っていこうと誓い合った。
このドールたちの秘密会議は、そんなマスターたちに倣って、協力体制を築き、みんなで強力な雪華綺晶からマスターを守っていくという盟約を結ぶために開かれたもののようだった。

以前、まかない世界では、犬猿の仲である水銀燈と真紅の間にさえ共闘の誓いが成立した。
それに比べると、真紅、翠星石、蒼星石、金糸雀の4人は仲も良く、この合従連衡は遥かに容易に思われた。


 「気高き薔薇乙女の名にかけて…互いのローザミスティカにかけて」

元々アリスゲームに否定的で、姉妹で一番争いごとを嫌う翠星石が揚々と誓いを読み上げる。

 「お互いの危機には手をさしのべあうと誓うです…!」


真紅が手を重ね、蒼星石が手を重ねる。
最後に、促されて金糸雀も手を重ねた。


 「誓いを――」



■ 鳥海皆人

 「あの桜田くんなんだよね?」


ジュンは、目の前が暗転するのを感じる。
自分を知っているということは、あの忌まわしい学年集会での出来事を知っているということだ。

記憶がまた、フラッシュバックする。

 「うんそう、その桜田…」


 「すごい…俺4組の鳥海皆人[とりうみかいと]!」

皆人と名乗った少年は、目を輝す。

 「一年の頃からずっと話してみたいって思ってたんだ」


高揚した口調で「嬉しい」と言い、それからジュンに握手を求める。


 「よろしく」

 「――え?」


皆人がジュンと会いたがっていた理由は、いくつかあった。

1つは、2人とも親の職業が古物商であったということ。しかも、ジュンの親はこの業界では有名なやり手らしい。その親の仕事の関係で皆人はローゼンメイデンのことも知り、図書館で関連する書籍を探していたという。
それから、ジュンが不登校の理由になったドレスのデザイン画。多くの生徒が、男子のジュンが女性のドレスをデザインしたことを馬鹿にしたのに対して、皆人はジュンの才能を羨ましく思ったという。


 「めちゃくちゃ感動したし、実はちょっと嫉妬もしたな…」

皆人は胸のうちを明かす。

 「俺にもあんな芸術の才能があったら」


しきりにジュンを羨ましがる。
ジュンは、忌まわしい記憶しかないデザイン画を初めて他人に褒められた。

皆人は「引かれること」を不安に思いながらも、扉を少し開けて自分の中の世界を少し見せてくれたのだ。

引く理由なんてジュンにはもちろんなかった。
他人の世界に招き入れられて、ジュンは世界を共有することの素晴らしさを知る、あるいは思い出す。


  こいつなら、もしかしたら

ジュンも皆人に、ある秘密を打ち明ける決心をする。
皆人に喜んでもらいたい、または一緒に喜びを共有したいと思う。

 「あの…さっきのローゼンメイデンって…実は…」



■ 帰り道

帰り道、ジュンは皆人との会話を思い出していた。
初めて自分の趣味を理解してくれて、憧れさえ抱いてくれる同年代の友人にも出会えた。

それは、これから中学校へ復帰するジュンにとって、大きな勇気となった。

 「このままいけば月曜日になったら、ちゃんと――…」


ローゼンメイデンを所有していることを打ち明けたことで、どんな結果を招くかはまだわからない。
それでもジュンが自分で選んだ道だ、人のせいには出来ないし、自分で受け止める覚悟は出来ている。


同じころ、金糸雀も秘密会議からの帰途についていた。

彼女に似合わない、深刻そうな表情を浮かべている。
アリスゲームよりマスターを優先させる同盟について考えているようだった。


 「確かに…マスターは大切かしら、ずっと守ってあげたいわ、でも…」

金糸雀は、ピチカートに語りかける。

 「私たち薔薇乙女の本分といったら、アリスゲームなのかしら」


それから、いつも1人で戦い、アリスゲームの残酷さを真正面から受け止めている姉の水銀燈に想いを馳せる。

 「こんな時、あの子なら何て言うかしら」


私たち……これでいいのかしら、 いつまでこうしていられるかしら…




次回は6・7合併号(1/6発売)掲載予定


【 今回の概要 】
ジュンは図書館で、鳥海皆人という名の少年と出会う。同じ学校で同学年のその少年は、ジュンと趣味までも同じだった。自分に憧れているという皆人に、ジュンはローゼンメイデンのことを打ち明ける。一方ドールたちは、雪華綺晶に対抗するために、共闘を誓い合うのだった。



【 今回の考察 】

▼ 鳥海皆人

今回は新しいキャラクター、鳥海皆人の登場です!
新キャラ・鳥海皆人

さくら中学の二年生。学校も学年もジュンと同じ。
さらに親の職業も同じで、ジュンが創作できることを羨ましく思っているという。

あまり影を感じさせない少年だが、それだけ隠れいてる部分も見えづらく、初登場の今回だけでは、つかみきれない登場人物です。

ただ、ジュンが中学校に復帰する上で、キーパーソンになるのは間違いなさそうです。


▼ 金糸雀の意外な一面

金糸雀の意外な一面
いつになく深刻な表情をみせる金糸雀

マスターのみっちゃんとは仲良しで、いつも楽観的で呑気そうにしていて、みっちゃんと過ごす時間を大切にしている金糸雀ですが、やはりアリスゲームの宿命は受け入れているようです。
しかも、姉の水銀燈を除けば、姉妹の中で一番真摯に受け止めているようにみえます。


水銀燈は、とても真面目な性格でアリスゲームを一人で正面から受け止め、残酷な宿命を自分の中に受け入れている。いつも体と心を疲れさせていて、それを隠すために表面を偽悪的に装う。

金糸雀は水銀燈より器用に立ち振る舞うことができる。他の姉妹とも仲が良いし、アリスゲームという避けがたい宿命を受け入れつつ、平和な日常を謳歌することもできる。


他の姉妹も、アリスゲームの残酷な宿命を知っているし受け止めているが、この長女と次女のアリスゲームへの向き合い方は、深刻さの度合いの違いを感じさせる。
ローゼンメイデンシリーズの最初の2体、水銀燈と金糸雀だけが知っている、あるいは直接見聞きしたものがあるのかもしれない。




<TALE 31>
掲載: 週刊ヤングジャンプ 2011年2号 / 12月9日(木)発売
ページ数: 28ページ
登場人物: ジュン、真紅、金糸雀、翠星石、蒼星石、New!鳥海皆人



[ 関連ページ ]
前回 ローゼンメイデン TALE 30
ローゼンメイデン原作の全話レビュー


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