山とスキーとローゼンメイデン

登山、スキーについてのブログです。 また、ローゼンメイデンについての記事も書いています。

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ローゼンメイデン tale40

TALE40 / 白い悪魔

ねぇ、償いたいと思わない?


■ あなたはもう逃げられない

長い廊下だった。
巴は息を切らせながら全力で走るが、どこにも辿り着けない。

廊下は合わせた鏡の中みたいに、終わりがないように思えた。


 「どこへ行くの? こまどりさん」

いつの間にか、巴のすぐ後ろにめぐが迫っている。

なおも前方へ駆け出そうとする巴の前に、鏡が立ちふさがる。
逃げ場は失われてしまった。


 「あなたなら、きっとなれるわ」

めぐは言う。

 「私のかわりに、白薔薇の苗床に……」


苗床・・・?
巴には何のことかは分からない、しかし苗床という言葉には不吉な響きがあった。


 「さ…桜田くんもそうなのね…?」

と巴が言う。
ジュンが謎の昏睡状態に陥ったのは、その苗床と関係があるに違いない。


 「安心して、別に乱暴なことをしたわけじゃないわ」

女の子はもっと深くて痛いトコロを的確に突けるの、とめぐは答える。
男の子なんかに生まれてきた罰を与えたの。


めぐの世界の中で完結された話のようだ。

今の巴には、めぐの言葉に込められた意味を深く考えている時間はない。
一刻も早くここから逃れるのが先決だった。


ふと後ろに回した手が何かに触れ、巴は驚いて後ろを振り向く。
鏡の表面に触ったはずなのに硬質感が伝わってこない、それは水の表面に似た感触だった。


巴は鏡に映っためぐを見る。
鏡の中のめぐの背後には見たことのない白い人形がいた。



■ あなたも罰が必要?

鏡の中の白い人形が、白い茨を伸ばしてくる。
その茨が巴の手や体を縛り上げる。

強い力ではないが、それでも巴は少しずつ鏡の中に引きずり込まれる。


 「離して…」

巴は必死に抵抗する、自分がなぜこんな目に遭わなければならないのか分からない。

この人形とめぐが、ローゼンメイデンやアリスゲームに関係していることは分かった。
しかし、自分はドールを失ったマスターだ。
指にはもう、その証である指輪もない・・・さみしいことではあるけれど。


 「あら、そうかしら?」

めぐは、巴の薬指に残る指輪の痕を指摘する。

 「…ね?わかる? 感じるでしょう、それが契りってものなのよ」


物理的な指輪が消えようと、絆(あるいはシガラミ)というものはその後もずっと在り続ける、指輪の消えない痕はその表象だ、とめぐは言う。

絆は、思い出という形でも認識することができる。

 「あなた、指輪を失ってから雛苺のことすっかり忘れてしまった?」


 「忘れたりなんかしない…」

たとえ何十年という時が過ぎても絶対に忘れない、と巴は断言する、雛苺との絆は確かに残っている・・・。


雛苺と巴の間に架けられた絆、それこそ白い悪魔が巴を欲する理由だった。


めぐは巴の瞳を覗き込み、それから静かに目を閉じる。
かつて契約を交わした、黒い天使の人形のことを思い出す。

自分も同じだ、だから巴の気持ちはよく分かる。
ドールを失う悲しさも、絆だけがあざのように残るどうしようもない喪失感も、そして、癒えない傷の場所とそこを効果的に痛めつける方法も・・・。


めぐは、巴の心の奥に隠された、最も柔らかくて傷つきやすい場所を正確に見抜く。
攻撃するポイントに照準を定める。


 「でもあなた・・・」

めぐが静かに言う。

 「あの子を救えなかったのね?」



■ 無人病院


 「これは愛の重さ・・・くっ」

みっちゃんは、ケースに2人のドール(水銀燈と金糸雀)を入れて、病院へ向かっていた。
この日は有給休暇をとって、ジュンを見舞いに行くのだ。

当然ながら水銀燈は渋ったが、めぐを探す手がかりが見つかるかもしれないと説得されて、連れ出されたようだった。


みっちゃんとケースに入れられた2人のドールが、有栖川大学病院に到着する。
正面の自動ドアが開く。


 「…あれ? 誰もいない…?」

病院には誰もいなかった。
ロビーは静まり返り、コンピュータや自動販売機のモーターの音だけが低く唸っていた。

順番を待つ患者がいないというだけならともかく、昼間の時間、こんな大病院の受付に誰もいないというのはどう考えてもおかしい。


それでもジュンのいる病室に向かうため、みっちゃんはエレベーターのボタンを押す。
1機が扉を開ける。

エレベーターに乗り込もうとする3人は、中に据えられた鏡の表面に波紋が広がるのを見る。
そこに映し出されたのは、めぐと巴の姿だった。



■ ねぇ、償いたいと思わない?


 「そうやってあなたが美しい思い出に浸っている間に」

めぐは続ける。

 「あの子可哀想に、バラバラにされてしまったんですって?」


あなたは自分が絆を疎かにするような人間ではないと言う、思い出を大切に保存して、この先何十年もそれを抱えながら生きていく覚悟のある人間であると。

でも結局のところ、指輪がない、物的な繋がりがなくなったという理由で自分は関係ないという顔をして、雛苺がいなくなった時も苦しんでいる時もなにもしなかった。

 「指輪がないから、自分のせいではないって思ってた? …ふふふ」


以前、巴は学校復帰を目指していた頃のジュンを、雛苺たちの助けを求める声に耳を傾けることを忘れてしまっている、と責めたことがあった。

しかし、自分こそが何も行動しないでただ他人に任せきりで、その挙句に、手一杯だったジュンを詰ってしまったではなかったのか、と巴は考える。
そのことで、雛苺やジュンを深く傷つけてしまったに違いない。

めぐの言うとおり、自分には罰が必要なのかもしれない・・・・。


 「ねぇ、償いたいと思わない?」

めぐが言う。


それを聞いた巴は抵抗する意志を失う。
手から力が抜け、うなだれた顔から生気がうせる。


 「私のものになってくださいな、そうすれば・・・」

と白い人形は巴に囁く。

 「私を通じて、あなたはあの子の糧になれる」


あの子をずっと抱きしめてあげる、貴女のかわりに――


それで償えるのなら・・・と巴は思う、雛苺が幸せになるのなら・・・。
巴は抗うことなく、鏡の中に引きずり込まれていく。


その時、鏡が割れる。
何者かが、この空間に割り入ってくる。


 「めぐ・・・!」

姿を現したのは水銀燈だった。




次回は51号(11/17発売)掲載予定


【 今回の概要 】
逃げ場を失った巴に対して雛苺のボディを得るための苗床となることを、めぐとその背後にいた白い人形は求める。めぐは巴の心に効果的な一撃を加えて”罰”を与え、人形は鏡の中に巴を引きずり込もうとする。そこに水銀燈が登場する。



【 今回の考察 】

▼ 雪華綺晶

これまでも何回か登場した雪華綺晶みたいな人形は、やはり雪華綺晶と関係があることが判明しました。

雪華綺晶人形
  → 雪華綺晶人形をアップで見る


◇ 苗床

雪華綺晶は、

  人間からはアストラルを得て、ドールからはエーテルを得る

という解釈でいいみたいです。
(実はアストラルとかエーテルとか、全然分かりませんが・・・)

さらに言うと、マスターたちを集めるのは円滑に姉妹の器を得るための下準備、という意味合いが強いようです。

  「貴女を苗床にすれば、あの器は私を受け容れてくれるはず…」


ときに今回、巴の体ごと鏡の中に引きずり込もうとしています。
今までの例から見ると、人間を苗床にする時は肉体の方は現実世界に残しています。

鏡の中へ
巴を鏡の中へ引きずり込もうとする雪華綺晶的人形


「中身(アストラル)」を抜いたあと空っぽの殻となった体だけを、ペッと外に吐き捨てるのかもしれませんし、すでに今回は最初から、巴はどっかの精神世界や夢の中に連れてこられていたのかもしれません。

無人の病院に来てしまったみっちゃんも、なんかヤバちっくです。



◇ 雪華綺晶の戦略

雪華綺晶は巴を引きずりこもうとしていた頃、病院に来た真紅たちのことも襲撃したようです。

雪華綺晶人形の襲撃@病院
真紅たちを襲撃(?)する雪華綺晶人形


真紅たちは今のところ、ジュンの謎の眠りが雪華綺晶と関係していると断定するには至っていない。
このような形で病院で襲撃したら、雪華綺晶は自分の仕業であるとアピールしているようなものだと思います。

そもそも真紅たちはジュンのそばにいても、何かを出来るわけではない。放っておいても何の問題もなかったはずなのに、なぜこのタイミングで襲撃したのでしょう・・・(今は、巴を苗床にすることに全力を傾けた方が良さそうに思える)。


理由は分かりません。
雪華綺晶が、ただそうしたいと思ったから・・・それが理由かもしれません。
あるいは、もっと深い考えがあるのかもしれませんが。。






【 その他 】

コミックス『ローゼンメイデン』第6巻
2011年11月18日(金)に発売!

Amazonなどですでにご存知だった方も多いと思いますが、誌面でも発売日の告知が来ました。

コミックス「ローゼンメイデン」6巻お知らせ


ローゼンメイデン 6 (Amazon)



<TALE 40>
掲載: 週刊ヤングジャンプ 2011年47号 / 10月20日(木)発売
ページ数: 27ページ
登場人物: 水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石、真紅、柿崎めぐ、柏葉巴、草笛みつ、雪華綺晶の分身のような人形
備考:



[ 関連ページ ]
前回 ローゼンメイデン TALE 39
ローゼンメイデン原作の全話レビュー


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