山とスキーとローゼンメイデン

登山、スキーについてのブログです。 また、ローゼンメイデンについての記事も書いています。

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ローゼンメイデン tale41

TALE41 / 別れ

私の新しい身体……拵えてくださっていたのですか?


■ まさか同じ病院で再会するなんて


 「やっと見つけたわ……めぐ……」


めぐは、思いがけない水銀燈の登場に驚き、それから一瞬だけ嬉しそうな表情をした。
しかし次の瞬間には、仮面のような微笑で感情を覆い隠してしまう。


 「久しぶりね、水銀燈」

めぐの声は中立的で、親しみも敵意も感じさせない。


 「えぇ・・・本当に」

と水銀燈は答える。


本当に久しぶりだった。

鏡の中に連れ去られためぐを追ってnのフィールドに飛び込んだ水銀燈は、まかない世界に迷い込み、真紅たちとも共同生活を送った。 その後も一人でnのフィールドを彷徨い続けて、ようやくこの場に辿りついたのだから。


それにしても、と水銀燈は思う。 長い旅の果ての再会にしてはあまりにお互いクールでドライだ。 もう少し感動的な一幕となってもいいと思うのだけれど・・・。

それは一つに、めぐがまるで「無駄な」旅のことを知っていて水銀燈を嘲弄し、再会に水を差したということもあるが、なにより雪華綺晶と一緒に行動しているめぐに水銀燈が不審を抱いたからだった。


 「そこに隠れているジャンクの末妹と馬が合ったということかしら」

水銀燈は少し憎々しげに言う。


 「白い悪魔は話が早かったわ」

いつまでも命を奪ってくれない黒い天使と違って、とめぐは言う。

 「こうして私に自由に動ける身体をくれたのよ」


ドールが媒介に力を与える・・・立場が逆転している。
それではまるで、めぐが人形になってしまったみたいだ。

そんなことが可能なのか、またそれが何を意味するのか、水銀燈には分からない。


 「解せないわね、それは契約?」

 「ふふ・・・違うわ、約束よ」



■ 病院のまやかしの廊下

ジュンの見舞いのため有栖川大学病院へ来ていた真紅たちもまた、どこまでも続くような無限の廊下の中にいた。


 「ここって、もうとっくに病院とかでなく……」

と翠星石は言う。

 「雪華綺晶のnのフィールドの中です」


ジュンが深くて暗い眠りに陥った理由はこれまで不明だったが、このような妨害をしてくる以上、雪華綺晶が関与していたことはもう疑いようがない。


今まで他のドールたちに気取られぬように密かに行動していた雪華綺晶は、もう自分の正体と動向を隠すつもりはないらしい。 おそらく、その必要がなくなったのだ。

計画が次のステップへ進み、ジュンにドールたちを近づけさせないことが最優先事項になったのだろう。

ドールを遠ざけようとしているということは、雪華綺晶はジュンの肉体を何かに利用しようとしているのだ。 もしかしたら、すでにどこかへ連れ去られてしまった後かもしれない。


それでも、この場であれこれ考えていても何も始まらない。
とにかく進んでみるしかなかった。


 「無事でいて頂戴、ジュン」

真紅は祈らずにはいられない。



■ 失われたもの

雪華綺晶ドールそっくりの人形がたくさん現れる。
人形たちは、水銀燈や金糸雀に襲いかかってきた。

糸で操られているだけの人形で、攻撃力はない。 巴を鏡の中に引きずり込むまでの時間稼ぎのつもりらしい。


 「ふふふ、久しぶりにすごい楽しい」

めぐは、水銀燈や金糸雀が戦う姿を見て楽しそうに笑う。

 「命を使ってできる遊びの方がよっぽど楽しい…」


必死に戦ってる水銀燈を前に、冗談を言っているようにも見えるし狂気の沙汰のようにすら見えるが、めぐは真剣だった。
とても真面目に、今、生きているという事実を楽しんでいるようだった。


命をかけた行為には、目に見える具象的な死がつきまとう。 死を手で触れられるような状況になって初めて、人間は生きている現実を強く実感することが出来る、というのは皮肉な話だ。

せっかく白い悪魔に自由な身体を――おそらくは期限つきで――もらったのに、学校は、実際は病院と大して変わらない退屈な場所だった。
看護師や医師の代わりに教師がいて、病気に蝕まれ囚われている病人たちの代わりに、システムにがんじがらめにされた生徒たちがいるだけだった (それに学校給食も、病院の食事みたいに不味かった)。

めぐは、そんな砂を噛むような思いをするために白い悪魔と取引をしたわけではない。


一方そのころ、そうやって雪華綺晶とめぐの注意が水銀燈たちに向いている間に、みっちゃんは巴を助けだそうと画策していた。

隙をみて、巴のそばに駆け寄る。


 「大丈夫? しっかりして」

みっちゃんの呼びかけに、巴は意識を取り戻す。


 「あなたは」

 「立てる? 今のうちに逃げましょ」


しかし、巴の体に巻きついた茨を引きちぎった時、雪華綺晶が気付く。
みっちゃんは最後の力を振り絞って巴を引き離し、金糸雀に託すが、自身は雪華綺晶の茨に絡み取られてしまう。

雪華綺晶にとっては、巴がみっちゃんに替わったところで、別に不都合はないようだった。


 「第二ドールのマスターでもかまいませんわ、いいでしょう?お父様・・・」

そう言うと雪華綺晶はみっちゃんを茨で捕らえたまま、鏡の奥へ潜っていく。
用を済ませたから、もう長居は無用と言わんばかりに。


 「じゃあ残念だけど、またね水銀燈」

めぐも雪華綺晶について鏡の中へ撤退していく。


 「みっちゃん!! 待ってて、今ッ・・・」

 「私はいいからっ、巴ちゃんを」


必死に追いかけてくる金糸雀に、みっちゃんは、今は巴を守って欲しいと言う。


雪華綺晶とめぐとみっちゃんを呑み込んだ鏡は、扉を閉ざす。 ただの鏡に戻り、入り口の機能を失う。


水銀燈と金糸雀は、気がつくと元の病院のエレベータの中に立っていた。
目の前の鏡は、何事もなかったかのように沈黙している。 今まで起こっていたことを示す痕跡は、なに一つとして残されていなかった。

ただ、世界からみっちゃんが消えてしまっていただけだった。



■ 人形師

薄暗闇の中を、一体の人形が歩いていく。
広い部屋には数本のろうそくだけが灯されている。


部屋の奥が人形師の作業場になっているらしく、そこだけが煌々と明るい。
作業場では、主らしき人物が台に向かって何かを製作していた。

人形がすぐ後ろにまで歩み寄っても、主は作業に熱中していて気がつく気配がない。


 「お父様、ただ今戻りましたわ」

人形は声をかける。

 「私の新しい身体…拵えてくださっていたのですか?」


声をかけた人形は、みっちゃんを捕獲して戻ってきたばかりの雪華綺晶だった。


 「お前が集めてくれたから材料は揃った」

だから、お前には他の誰も持っていない有機の身体を作ってあげよう・・・。


そう言うと、お父様は振り向いて愛おしそうに雪華綺晶を撫でるのだった。

ろうそくがお父様を照らし出す。
その人形師は、鳥海皆人だった。




次回は3号(12/15発売)掲載予定


【 今回の概要 】
ついに水銀燈とめぐが再会する。しかし雪華綺晶を間に挟んだ二人は、接点を見出せないまま袂を分かつ。一方みっちゃんは巴の救出には成功するが、自身は囚われて鏡の中へ連れ去られてしまう。みっちゃんを連れ去った雪華綺晶を待っていた人形師は鳥海皆人だった。



【 今回の考察 】

TALE 41は、驚きと衝撃の回でした。
人形師・皆人の登場やみっちゃん強奪、たくさんの雪華綺晶人形たちの出現。

そんな中で個人的には「めぐと水銀燈の再会、そして訣別」が、一番心に残りました。


[追記 2012年05月20日]
コミックス7巻で、このTALE41のサブタイトルが「別れ」と判明しました。



▼ めぐと水銀燈

まず、カラー1ページ目の2コマが印象的です。
めぐの表情変化がリアルです、自分の中の悲しい記憶が呼び起こされてしまったくらいに。。

一瞬の戸惑いと懐かしさや親密な記憶が蘇ったような表情から一転して、相手を牽制するような形式的・礼儀上だけの微笑の表情への変化。

めぐの表情カラー


例えば、よりを戻せない相手にばったり会ってしまった時などに出る表情みたいな、そんなめぐの心情がこの絵だけで伝わってくる気がします。


この絵で、めぐは水銀燈を振り切る決意をしていることをなんとなく感じました。
なぜそんなことをしなくてはいけないのか、理由はまだ分かりませんが。

ただそれは、根拠はないけど、水銀燈のためにやっている気がするのです。


  ★―――★―――★―――★―――★―――★―――★

めぐは「往生際悪く生にしがみつき、私欲のために親しい者を裏切る醜い悪役」 を自分に与えて、その役に陶酔しているように見える。

「天使にもたらされる美しい死を待つ薄幸の少女」 という物語を自分のために用意して、それを演じて陶酔していた時のように。

これは現実逃避ではなく、避けがたい死を受け入れるために、噛み付いてくる辛い現実の痛みを、少しでも和らげるために行なっている防衛的なものだと思う。 また、悪役を演じて陶酔する露悪趣味みたいなところは、水銀燈に似ていると思います。


そして、陶酔する一方で、一歩離れたところから冷静に自分を客観視して、自分のやっていることの意味を知っているもう一人のめぐも存在しているようにも思えます。

  ★―――★―――★―――★―――★―――★―――★


それとはまた別のところで、自由に動ける身体を手に入れた喜びと、思う存分に自由を謳歌してみたいという素直な気持ちも伝わってくる。


  「命を使ってできる遊びの方がよっぽど楽しい…」

というセリフは、そういうところから出た本音で、「悪役」を演じるために呟いたセリフではないと思う。


めぐは最初、学校に生きていることを実感できる場を期待していたと思います。 残念ながら学校は、フライドチキンの工場みたいに管理的で画一的で、そこの生徒たちも品質管理されている製品みたいに退屈なもの、とめぐの目には映ったようです (学校に期待し、失望するところは TALE 36 の翠星石を彷彿とさせる、その回の扉絵がめぐと水銀燈だったことも感慨深い)。

今回、戦闘を目の当たりにして、めぐは初めて生きているという実感ができたのだと思います。 だから、水銀燈が戦っているのに、あんなに楽しそうにしていたのだと思う (人が必死になって戦っているのを、無闇に面白がったわけではなく)。


めぐ

めぐと水銀燈、次に会えるのはいつ、どんな状況下でなのでしょう。



▼ みっちゃんと金糸雀

今回、みっちゃんは巴を助け出し、代わりに自分が雪華綺晶に捕まってしまいます。

勇気がいることだし、行動力と決断力も必要です。
普段は飄々としているけど、いざという時に見せるこういう英断は金糸雀と似ている気がします。


みっちゃん
連れ去られるみっちゃんは、最後まで金糸雀を気遣う


みっちゃんが連れ去られたことで、金糸雀は、今までなおざりにしてきたことと正面から向きあう必要に迫られる。

それは、アリスゲームとマスターの優先順位を決めること。


TALE 31 で、金糸雀はマスターは大事だけれど、ローゼンメイデンのドールが優先すべきことはアリスゲームであると、自分の考えを示しました。


迷う金糸雀


しかし、その後も態度を曖昧にしたまま、真紅や翠星石たちと連合を続けていた。
みっちゃんが連れ去られたことで、金糸雀は自分の態度と方針を鮮明にさせておいた方がいいのかもしれない。


今回はみっちゃんとめぐを助け出すため、金糸雀は腕を支え水銀燈に協力する。

金糸雀と水銀燈


これが金糸雀の出した最終的な答えなのか、それはまだ分かりません。


それに・・・
もしかしたら、どちらか1つを選ぶなんて必要もないのかもしれませんし。



▼ マスターたちと雪華綺晶

水銀燈がみっちゃんやめぐを連れ戻すために鏡の中に手を突っ込みますが、その時何かを掴む。
鏡から引っ張り出したのは、同じく有栖川大学病院にいた真紅です。

なぜ、真紅の手が水銀燈の手を握ったのか。
もしかしたら、真紅も同様に鏡に手を突っ込んで、何かを探していたのかも?
(というのも、いきなり空間から手が生えてきたら避けるか払うかして、間違っても、その手を握ったりはしないと思うので。。 あるいは、真紅たちが視界の悪い中を、手探りで進んでいた可能性もありますが)


真紅が鏡に手を伸ばして探すものがあるとしたら、それはジュンの身体だと思う。
ジュンも病室の鏡から、雪華綺晶に連れ去られてしまったのかもしれません。


今までマスターの精神ばかりを狙っていた雪華綺晶ですが、なにやら方針が変わり、身体も狙ってきているみたいなので・・・ (白い人形は黒髪で女の子のマスターを欲しているそうですが、「材料」はたくさんあった方が、なにかと好都合だと思いますし)。

こうなると、同じ病院にあるオディールや結菱氏の身体も心配になってきます。



▼ 鳥海皆人

ジュンの創作能力に憧れ、嫉妬すらしていたという皆人。

鳥海皆人


その夢がかなって、このたび、ついに人形師になりました!


ジュンがめぐに踏まれた日、皆人の持っていた「少女のつくり方」はまだ未開封(?)でした。
それから2、3日しか経っていないと思いますが、いきなり雪華綺晶の世界で「お父様」をやっている皆人。


果たして、皆人の身になにが起こり、これから何を起こすのか。
それは次回以降のお楽しみです!





【 その他 】

スピンオフ漫画 『ローゼンメイデン dolls talk(ドールズトーク)』 新連載!
「りぼん1月号」(集英社・2011年12月1日発売)より連載スタート

ローゼンメイデン dolls talk(ドールズトーク)

  漫画:かるき春
  原案:PEACH-PIT
  掲載:『りぼん』(集英社) → りぼん公式サイト


かるき春先生の描かれる
かわキュートなドールズのりぼんとフリルな日常風景を
楽しんでいただけたら嬉しいな~!と思います。
ももたねは原案という形で監修させていただきます。
本編では最近出番の少ない雛苺の活躍も!私たちも楽しみ♪です。
週刊ヤングジャンプ連載中の本編ローゼンメイデンともども宜しくお願いします。


(PEACH-PIT' days) http://blog.p-pit.net/?eid=1033888  より引用



コミックス 『ローゼンメイデン』 第6巻
2011年11月18日(金)に発売!

コミックス「ローゼンメイデン」6巻お知らせ




『りぼん』 2012年01月号 (Amazon)

ローゼンメイデン 6 (Amazon)





<TALE 41>
掲載: 週刊ヤングジャンプ 2011年51号 / 11月17日(木)発売
ページ数: 30ページ
登場人物: 水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石、真紅、柿崎めぐ、柏葉巴、草笛みつ、雪華綺晶の分身のような人形、鳥海皆人
備考: カラー3ページ(うち扉絵見開き2P)、サブタイトルなし



[ 関連ページ ]
前回 ローゼンメイデン TALE 40
ローゼンメイデン原作の全話レビュー


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▼ スノーピ さん -URL- のコメント #- | 2011.11.25 01:39 [ 編集 ]


tomo318i 様

めぐが目的としていること、すごく納得しました。
補足のため、tomo318i 様のブログよりコメントを引用させていただきます。

| 22. tomo318i 2011年11月24日 12:40
     (略)
| 私は「生命力を使い果たす」ことこそがめぐの
| 本当の目的なんじゃないかと思い始めています。
| 水銀燈に「マスター殺し」という十字架を背負
| わせないためかも知れません。

とてもしっくり来る説です!

以前、めぐは水銀燈の髪をとかしながら「貴女は天使で、人は穢してはいけない綺麗なものに触れたがる」と言っていました。 めぐの定義では、

  天使 = 穢してはいけない綺麗なもの
なのだと思います。

「物語」の中の天使は穢れてはならない存在であり、同時に「現実」の水銀燈にも、重い十字架を背負って欲しくない・・・だから水銀燈ではなく雪華綺晶に自分の命を奪ってもらうことにした。 ついでに、自由の身体というデザートを楽しみつつ、それを目当てに水銀燈を裏切り雪華綺晶に寝返ったと思わせたい、とめぐが考えたというのは説得力があると思いました。

靴を拾って追いかけてくる王子様は水銀燈であり、それを振り切るために、かぼちゃを馬車に変えてくれる魔女の手下になったフリをする、ということなのでしょうね。


今の水銀燈はめぐの真意がわからず困惑していると思いますが、分かったら分かったで、またどうしていいか分からなくなってしまいそうです・・・。




▼ tomo318i さん -URL- のコメント #- | 2011.11.24 12:52 [ 編集 ]


めぐがどうしてこんな事をするのか・・・同じような結論に達しつつありますね。

めぐが、たとえ偽りであったとしても自由に動き回れる現在の状況を楽しんでいることだけは確かだと思います。そりゃそうですよね。病院の周りぐらいしか行けなかったんですから。

そして周りの人間を虜にして操るという「女王様状態」も楽しんでいるはずです。

でも、彼女の最終的な目的は変わってないように思えるんですよね。それは「死」です。

水銀燈と触れ合ううちに、水銀燈をマスター殺しにしたくなくなったんじゃないですかね。そこに都合良く現れたのが雪華綺晶・・・という感じで予想してます。














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2011.12.29 12:15 | 山とスキーとローゼンメイデン

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