山とスキーとローゼンメイデン

登山、スキーについてのブログです。 また、ローゼンメイデンについての記事も書いています。

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ローゼンメイデン tale43

TALE43 / 平穏な日常

お願いよ、力を貸して・・・


  二つの世界を結ぶ点は、もう消えてしまったんだろう

  それでも時々、あの初めてのメールを思いおこす
  そして、あれは夢じゃなかったと確かめる



ジュンは時々、違う世界の自分を想う。
もう一人の自分にぜんまいを巻かれた、ローゼンメイデンの人形たちを思い出す。

彼らは、ある日突然こちらの世界へやって来て、同じように唐突に立ち去った。


それは現実に起きた出来事のはずだ。
でも、たとえ夢だったとしても別に構わない気もする。



■ 「平穏な日常」

現実にしろ夢にしろ、この接触はジュンの意識に変化をもたらす強烈な体験となる。
この出来事の後、ジュンは以前よりもずっとうまく現実世界と関わり合っていくことができるようになった、ようにみえる。

手元に残った結果だけをみれば、違う世界から来たジュンや真紅たちが空想や無意識によって生み出された架空の人物、ということにしてしまっても問題ないはずだ。

むしろ全ては夢だったということにして、フタを被せてしまった方が楽になれる。
生きた人形が存在するというオカルトみたいな事実を認めなくて済むし、アリスゲームという面倒くさそうなことにも関わらなくて済むのだから……。


それでもジュンは、やはり現実に起こった出来事として受け止める。
この記憶が現実世界から離れていかないように、しっかりと結びつけておく。

もしジュンが忘れてしまったら、かつてこの世界に真紅たちが存在したことを知る者はいなくなる。 それは――真紅が言ったように――最初から存在しなかったのと同じことなのかもしれない。


そうなれば、あちらへ通じる扉が開かれる可能性は永遠に失われてしまうのだ。



■ 鍵

ある時、斉藤さんはジュンのポケットからはみ出すストラップに気づく。

 「なあにソレ、カギ?」


ゼンマイだ、とジュンは答える。
ジュンは、真紅が残していったぜんまいをストラップにして携帯電話に結び付け、普段から肌身離さず持ち歩いていた。


ぜんまいと謎の人形、この2つの(どこからかやって来て、こちらの世界に残置された)物体が、ともすれば夢とも見分けがつかなくなりそうなあの一連の出来事を、現実世界に結びつける役割を果たしてくれているようだった。

物質の持つ現実的な重みと固定された形骸は、曖昧で流動的な人間の記憶や想いを補ってくれるし、持ち主を励ましてもくれる。


この2つの物質が存在している限りジュンは真紅達の存在を忘れることはないし、いつの日かまた、向こう側へ通じる扉を開いてくれるかもしれない。

そういう意味でこのゼンマイは鍵なのだ。 斉藤さんが指摘したように。


 「いつかまた会えるだろうか、僕の人形たち」

ジュンは強くローゼンメイデンたちのことを想う。


その晩、一本の電話がかかってくる。



■ テレビ電話

ジュンは何かの音で目を覚ます。
いつの間にか眠っていたようだ。

それが着信音だということに思い当たり、携帯電話に手を伸ばす。


ジュンを呼び続ける着信音は、いつもと違って聴こえた。
脳がまだ覚醒していないせいかもしれないし、あまり使わない機能でかかってきたのかもしれないし、特別な場所から想像もしない人が、尋常ではない用事でかけてきたのかもしれない。

ジュンは電話に出てみる。
その全てだった。


まず音声が入り、映像が送られてくる。
画面に映しだされたのはローゼンメイデンのドールたちだった。 翠星石と蒼星石、そして真紅がいる。

真紅達が、どこかの領域からかテレビ電話を使ってジュンにコンタクトしてきたのだ。 テレビ電話?


事態は入り乱れ、現実と夢が混ざり合っているようだった。
ジュンはとりあえず現実的な質問を投げかけてみる。

 「今かけてる携帯はいったい誰の…」

 「桜田くん?」


人間の少女が映る。
中学時代にほとんど接触を持たなかったまかない世界のジュンでも、柏葉巴だとすぐに分かる。
携帯電話の持ち主は彼女なのだ。

でもなぜ。

 「な…何で…? 柏葉と真紅たちが一緒に? まいた僕は?」


ジュンは、ますます混乱した。



■ 失われる「平穏な日常」

真紅が会話を引き取り、自分たちの置かれている状況を手短に説明する。

まいた世界のジュンが雪華綺晶に囚われてしまったこと、ジュンは力をくれるマスターでもあるので、ジュンを助けるためにはジュンの力が必要であるジレンマに陥ってること、つまり今頼れるのは(まかなかった)ジュンだけであること。

 「お願いよまかなかったジュン、力を貸して…」


ジュンはもちろん承諾する。
真紅の頼みだったし、なにより自分自身を救い出すために。

扉は開かれ、世界は繋がったのだ。


そこで電話の映像と音声が乱れる。
ノイズが混入する。

真紅たちの他にも、違う世界からこの世界に干渉しようとする者がいるのだ。


そして、ジュンの背後で人形が動き出す。




次回は13号(2/23発売)掲載予定


【 今回の概要 】
金糸雀と水銀燈が出会ったドールはニセモノ世界のホンモノだった。まやかし世界にいることの危険性を感じた金糸雀は、この局面の早急な打開を試みる。その頃、真紅たちはまかなかった世界とのコンタクトに成功するが、まかなかったジュンにも異変が忍び寄る。



【 今回の考察 】


▼ ニセモノ姉妹

まやかし世界で水銀燈と金糸雀が出会った人形は、雪華綺晶がローゼンメイデンを模して作った「姉妹」ということらしい。
つまり、水銀燈たちにとっては「ニセモノの姉妹」ということなる。


ニセモノ姉妹と本物姉妹


この人形は、実際は全然ローゼンメイデンの誰にも似ていない・・・ように見えます。
少なくとも姿形を本物に似せるつもりはなかったようです。

もともと実体を持たない雪華綺晶は、物質が作り上げる形状や容姿というものに興味がないのかもしれないし、うまく認識出来ないのかもしれません。

つまりこの人形の姿こそが、雪華綺晶がとらえて認識しているローゼンメイデンの姉妹たちの像なのかもしれない。


例えば、この「ニセモノ姉妹」には蜘蛛みたいにたくさんの手があり、襲ってくる。

これまで、雪華綺晶は一人で他の姉妹たちを相手に戦うことが多かった。

雪華綺晶vs他の姉妹連合
真紅たちにすれば、強大な力を持つ雪華綺晶に対抗するためのやむをえない共闘だったが……


「か弱い末っ子の自分を、姉たち全員が寄って集ってイジメた」という悲しみと恐怖の記憶が、雪華綺晶のローゼンメイデンの姉妹に対するイメージとなって、このたくさんの細い手がある人形を作り上げたのかもしれません。


そして、外の世界から遮断されて完全に雪華綺晶の主観だけで成り立つこの世界にあっては、現実社会で共有されている価値観や客観的事実などは意味をなさない。 イジワルな姉はニセモノであり(自分は本当の妹じゃないから冷たい仕打ちを受ける?)、雪華綺晶にとって都合の良い人形こそが本物の姉妹ということになる。


あるいはもっと辛辣で、「貴女たちはアリスという究極の少女を目指しているけれど、実際はこんなにも醜い存在」 という風刺と批難を込めた雪華綺晶から姉たちへ送るメッセージなのかもしれない。



▼ 雪華綺晶と「平穏な日常」

今回の話は2つの場面から成っています。

・まやかしの世界で水銀燈と金糸雀が出会った「ニセモノ姉妹」の話。 主観の支配する世界では「思い込み」だけでニセモノと本物が容易に入れ替わってしまう可能性もあるということ。

・まかない世界のジュンが、夢と現実の混ざり合うような領域で真紅たちからの電話を受けること。 結果、世界は繋がり扉は開かれる。

                 ◆       ◆       ◆




この2つの場面に共通しているのは、「本物とニセモノ」「現実と夢」といった対義的で明確に区分されいると思われる概念が簡単に混ざり合い、時に入れ替わってしまっているということです。


ニセモノは本物があって生まれてくるものですが、本物(という概念)もニセモノが存在して初めて成り立つ (本来的にモノが本物であることは当然で、「本物という概念」は必要ない)。

生と死も似たような合わせ鏡で、死がなければ生という概念が生まれないのかもしれません。
また、目が覚めなければ夢であると気づくこともないのかもしれない。

これらは片方の事象や概念を意識することでもう片方も認識することができて、その時になって初めて、それぞれの領域を確保・定義する必要が生じ、お互いを隔てる壁が築かれるのだと思います。


◇ 雪華綺晶

雪華綺晶は、この対となる概念の片方を致命的に欠損しているように見える。 つまり、本来は分かつべき概念の間に壁を築き上げることができないのです。
彼女は夢と現実の区別を付けることはなく、現実で叶わないことなら夢の中で叶えれば良いと考える。

物理的な器を持たない雪華綺晶は肉体に輪郭がなく、自分の領域というものをおそらくは把握できない。 空間と自分の境目をうまく見定めることができない。
そういう事情もあって、壁を作るという習慣が身につかなかったのかもしれない。


◇ 「平穏な日常」

壁を作れない雪華綺晶に対して、(「三匹の子ぶた」でレンガを積む末っ子みたいに)ひたすら外に対して壁を築いて来たのがまかなかった世界のジュンで、彼はまだ見たことのない自分の「限界」にまで想像だけで壁を作ってしまう。
それをまいたジュンに指摘されて、今度は意識的に壁を壊していくことにする。

ジュンが今まで築いてきた余計な壁を壊している間は、それでいろいろなことがうまく行くように見えていた。 壁を壊すことで世界が広がっていくのだから当然かもしれない。
今回の話では、世界を隔てる壁まで壊してしまう。 それによってもたらされるものが吉であるか凶であるかは、今後のお楽しみ・・・!


今回のサブタイトルは「平穏な日常」です。 それが失われようとしている回に「平穏な日常」というタイトルをつけるところは良いですね。

平穏ではない状態に移行して始めて「平穏な日常」というものを認識できる、といっているみたいで。


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<TALE 43>
掲載: 週刊ヤングジャンプ 2012年9号 / 1月26日(木)発売
ページ数: 27ページ
登場人物: まかなかった世界のジュン、水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石、真紅、柏葉巴、雪華綺晶人形、雪華綺晶人形の姉妹、斉藤さん、山口店長
備考:



[ 関連ページ ]
前回 ローゼンメイデン TALE 42
ローゼンメイデン原作の全話レビュー


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