山とスキーとローゼンメイデン

登山、スキーについてのブログです。 また、ローゼンメイデンについての記事も書いています。

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ローゼンメイデン0-ゼロ- 第1階

ローゼンメイデン0-ゼロ- / 第1階

マキマスカ・マキマセンカ



 「これが気になるのでございましょう」

その日、僕は奇妙な紳士と出会った。
今となっては、それが夢だったのか現実だったのかも分からない。


 「良いですとも、あなたにならお見せしましょう」

そう言って、男は持っていた鞄の蓋を開ける。

 「この愛おしい薔薇乙女(ローゼンメイデン)を」



■ 屋根裏の人形

場面は変わり、大正時代の東京。
大きなお屋敷で女中として働く少女の菊は、上京して日も浅く、まだ仕事にも慣れていない様子だった。

ある日、菊は大切な皿を割ってしまい、ガラクタ置き場となっている屋根裏部屋を一人で掃除するように申し渡される。
そこで、まるで生きているような精巧な造りの人形を見つける。

すっかり魅せられた菊は、憑りつかれた様にこの人形を自分の部屋に持ち帰る。



■ マキマスカ・マキマセンカ

他の土地や国から来たばかりの人たちがよくそうしてしまうように、菊もまた、自分の話し方が周りと違うことを気にしていた。
仕事が終わったあとに時々、菊は部屋で一人、東京言葉の練習もしているようだった(そして、語尾に「です」を付けるとたちまち、全てを東京言葉に変えてしまうというスゴイ裏技も発見していた)。


この日の菊は一人ではなかった。屋根裏で見つけた人形を相手に、発声と自己診断をしてみる。
実のところ菊は、自分で発見した「です」を付けるという裏技の効能に最近、少しずつ疑念を抱き始めていた。自分はなにか重大なミスを犯しているのではないか、と。

ともあれ菊は人形に話しかける、呼びかけてみる。


その時、タグのついた鍵のようなものに気付く。
ゼンマイだ。
まるで菊の呼びかけに応じて、ゼンマイが現れたようにも見えた。

タグには、“マキマスカ・マキマセンカ” という呪文のような一文が記されている。

人形の背中に穴を確認した菊は、ゼンマイを差し込み、巻いてみる。



■ 届け物

菊の働くお屋敷には、坊ちゃんと呼ばれる青年がいる。
坊ちゃんはどこか儚げだった。何かを探し求めているような、遠くだけを見つめているような眼差しをしていた。

菊は密かに、この坊ちゃんに想いを寄せている。


 「そうだよ、坊ちゃんにこの忘れ物を届けておくれ」

朝、突然坊ちゃんへのお使いを言い渡される菊。
坊ちゃんと話をするチャンスではあるのだけれど……。

坊ちゃんはもともと体が弱く外出を控えがちだったが、このところは毎日のように、別段用事もないのに遥雲閣へ通いつめているという。
当然、女中の間で様々な噂や憶測が飛び交うことになる。


坊ちゃんを乗せた車は路肩に停まって、菊の到着を待っていた。
菊は忘れ物の風呂敷包みを手渡す。
その時、ちらりと包みの中身が見える。
ありがとう、と言って坊ちゃんは車窓の中から受け取る。全ては事務的だ。

女中に対しても物腰が柔らかく丁寧だけど、心ここにあらずという印象だった。
坊ちゃんは遥か遠くだけを見ている……。

渡した包みの中身が遠眼鏡(双眼鏡)だったことも、なにか関係してるのだろうか、と菊は考える。



■ 翠星石

ぜんまいを巻くと、屋根裏で見つけた人形は動き出した。
そして、そのままベッドの下に走り去ってしまった。

おそらくはそういう仕掛けのカラクリ人形なのだろうけれど、一方で、まるで人形には意思があって、驚いて逃げてしまったようにも菊には見えた(もしこの人形に人間みたいな意思があったら、こちらの話もしっかり聞いてくれるのに、という菊の願望がそう錯覚させたのかもしれない)。

いずれにしても今の菊は、話を聞いてくれる相手が欲しかった。
腑甲斐無い自分や対照的にモダンで華やかな妹のことへの愚痴をぶちまけても、静かに受け止めてくれて、優しい言葉を探してきてくれる……間違っても自分を罵ったりなんかしない、そんな相手が。

その点、愛らしくていかにも大人しそうなこの人形は打ってつけの相手のように思えた。

しかし、この人形は翠星石だった。



■ 薔薇乙女

『薔薇乙女(ローゼンメイデン)』、それが坊ちゃんの探しているものだった。
そして、この屋根裏の人形こと翠星石がその薔薇乙女だという。

翠星石は人形ではあるけれど、自分の意思で動くし話もできる、キャラメルもムシャムシャ食べる。
どうやら、かなり特別な人形のようだ。
坊ちゃんが『薔薇乙女』を必死に探すのも、少し分かる気はする。

一方で謎も残る。


 「僕の探しているものはもっと途方もない」

食後のコーヒーを飲みながら、坊ちゃんは言った。

 「ずっと遥か遠くにいるんだ」


坊ちゃんは、自分の屋敷のガラクタ置き場にこの人形が存在していることを知らなかったのだろうか。
そもそも、たまたま名前が一緒なだけで、坊ちゃんの探してる『薔薇乙女』がこの翠星石であるとは限らない。坊ちゃんが探しているのは人形などではなく(菊的には一番考えたくないことだが)、本当に薔薇乙女と呼ばれる人間の女性なのかもしれないのだから。

いずれにせよ菊は、そこまで踏み込んだことを訊ける立場にはない。

おそらくこれからも坊ちゃんは双眼鏡を持って遥雲閣の最上階(12階)の展望室へ通い続けるし、菊は離れた場所からそれを見送るしかないのだ。
遥雲閣の天辺から、坊ちゃんはどんな景色を見ているのだろう……。


そのころ、遥雲閣ではささやかな異変が起きていた。



■ 13階

夕暮れ時、最上階で客を降ろした遥雲閣のエレベーターの中には乗務員の華だけが残された。
終業間際で客も無く、つい気が緩む。

ふと上に目をやった華は、文字盤に見たことのない13番目の数字が浮かび上がっていることに気付く。

エレベーターの函は存在しないはずの13階に接続し、その扉を開こうとしていた。




次回は2016年4月号(3/19発売)掲載予定


【 今回の概要 】
大正時代のお話。大きな屋敷で女中として働く菊は、屋根裏で一体の人形を見つける。ゼンマイをまくと、この人形はまるで生きているように動き出す。翠星石と名乗るこの人形は、屋敷の坊ちゃんが探し求めている薔薇乙女とも何か関係がありそうだった。



【 今回のローゼンメイデン 】

ついにローゼンメイデンの新シリーズ、スタートです!
とにかく嬉しいです。

『Rozen Maiden』(アルファベット表記) → 『ローゼンメイデン』(カタカナ表記)
に続く、新シリーズのタイトルは『ローゼンメイデン0-ゼロ-』。


▼ 大正時代

今回の舞台は大正時代。

時は大正時代


この時代設定は意外でしたが、もっと意外だったのは、大正時代の雰囲気がローゼンメイデンと妙にマッチしているということ。「カラクリ人形」とか「舶来品」とか、そういう単語の1つ1つがことさらにしっくり来ます。


凌雲閣(作中では遥雲閣)も登場。
今後、重要な舞台の1つになりそうな予感です。
 → 凌雲閣の写真 <国立国会図書館所蔵写真帳から>


当時のキャラメルの価値
 → 森永ミルクキャラメルの歴史年表|森永製菓


ちなみにローゼンメイデンのシリーズは2002年にスタートしたので、今年で14年目。大正時代に直すと、もう来年にはこの時代が終わり、次の昭和が控えてるということになります。



▼ 翠星石

今回、唯一登場する薔薇乙女は翠星石。

翠星石とキャラメル
究極の少女アリスを目指す・・・それが薔薇乙女!


ただ、鞄に収まっていないことや人工精霊のスィドリームがいないこと等、不自然な点も多々見受けられます。
いつの時代も行動を共にしていたという双子の妹の姿もなく、また、最初は記憶もありませんでした。
誰かと契約しているのかも不明。


たとえば、まかなかった世界からまいた世界への帰り道、翠星石は足を滑らせて転落してしまいましたが《→ TALE 26》、そういう事故が起きたのかもしれません。

ローゼンメイデンTALE26 翠星石の滑落
nのフィールドはいろいろな時代、世界へとつながっている <TALE26より>

今後の展開と合わせ、気になります。



▼ 菊と華

屋根裏部屋の掃除中に翠星石を見つけ、ゼンマイを巻いたのが菊。
今回はこの菊と翠星石を中心に、ストーリーが展開しました。

菊には華という妹がいます。もしかしたら双子の姉妹なのかもしれません。
華は、当時の花形職業だというエレベーターガールをやっていて、今回のラストでは不思議な現象に遭遇します。

そういうわけで次回は、華も大きくストーリーに絡んで来そうな感じです。

菊と華
キクアンドハナ



▼ 坊ちゃん

薔薇乙女(ローゼンメイデン)を探し求める青年。
記憶のない翠星石がこのお屋敷にいたのは、あるいは、薔薇乙女を呼ぶ坊ちゃんの声が聞こえて、呼び寄せられたからなのかもしれません。

しかし坊ちゃんは未だ翠星石の存在を知らず、毎日双眼鏡を持って塔の展望室へ通っています。
(もしこの時代に金糸雀がいたら、傘で空中散歩している彼女の姿を双眼鏡で目撃できたかも?)

この坊ちゃんも、重要な登場人物の一人であることは間違いなさそうです。

坊ちゃん
坊ちゃん(菊視点)

坊ちゃんとは別に旦那様と呼ばれる方もいるみたいで、そちらが屋敷のご当主様なのだと思います。
翠星石がいたのは、この旦那様のガラクタ置き場。



▼ 新シリーズ0-ゼロ-

今回始まった「0-ゼロ-」と前シリーズとの関係も気になります。
独立した外伝的なものかもしれませんし、前シリーズへとつながっていく話かもしれません。逆に、前シリーズからの続きかもしれない。

というのも、ローゼンメイデンの世界には「nのフィールド」があって、時代や場所を飛び越えることができてしまい、大正時代だからと言って「過去の話」とは限らないので。


これも次回以降が待ち遠しいです。



▼ 押絵と旅する男

今回の冒頭、汽車の中で2人の男がやりとりするシーンから十二階への話の流れは、江戸川乱歩の『押絵と旅する男』を彷彿とさせます。というかおそらく、オマージュなのだと思います。

ちょうど今年で著作権が切れて青空文庫で無料公開されていますし、短編なので気軽に読めます。
瞼に焼き付くような鮮やかな場面描写が印象的です。

 → ◇青空文庫 『押絵と旅する男』 (ファイル形式:txt、html)

 → ◇曇天文庫 『二銭銅貨・人間椅子 他41編』 (ファイル形式:mobi、epub)


仮にこの短編小説のとおりだとすると、冒頭のシーンは今回より数十年後の未来の話で、年老いた奇妙な紳士のほうが坊ちゃん(の弟)ということになりますが・・・。うむ、この辺は意識せず気楽に。



▼ ウルトラジャンプ 2016年3月号

ウルトラジャンプ 2016年3月号 thumbnail

今回のローゼンメイデン0-ゼロ- 第1階が掲載されたのは『ウルトラジャンプ 2016年3月号』(集英社)。
この号は、ふろくも充実しています。

ふろくの1つミニクリアファイルは、家電の説明書や保証書などを収納するのに便利なA5サイズで、実用的でもあるのですが、使うのがもったいないくらい綺麗です。


また、懸賞のプレゼントもあります。
ウルトラジャンプ本誌に付いてるハガキで応募します。
応募締切は、2016年3月18日(金)(当日消印有効)。

ウルトラジャンプ 2016年3月号 懸賞応募 thumbnail



次回も楽しみです!!



<第1階>
掲載: ウルトラジャンプ 2016年3月号 / 2月19日(金)発売
ページ数: 35ページ
登場人物: 菊、華、坊ちゃん、お敏さん、翠星石
備考: カラー扉、表紙、ふろく、プレゼント懸賞



[ 関連ページ ]
ローゼンメイデン原作の全話レビュー


関連記事

▼ スノーピ さん -URL- のコメント #- | 2016.04.09 06:50 [ 編集 ]


tomo318i 様
最初に今回の話を読んだ時は大正時代ということで、単純に過去の話だと思い込んでしまいました。
ですが可能性でいえば前シリーズの続きの話ということもありますし、tomo318i様が第2階の記事でおっしゃっているように「全ては誰かの見ている夢」ということすらあり得るのですよね。

>ローゼンメイデンには私たちにとっての過去も現在も関係ない・・・。

そしてどこの世界にも縛られない代わりに、どこにも本当の居場所のないイレギュラーな存在。。
そう考えると、ローゼンメイデンのドールたちにとってマスターとの契約がいかに大切か想像できる気がします。指輪を通して力をもらうだけではなくて、自分と世界とをしっかり繋ぎとめてくれるのもマスターなのだと思います。

この点、いつの時代でも同じ姿で現れるという、歳をとらない人形ならではの設定も活きている気がします。

一方で、(野良をやめて)マスターと契約を結び世界と繋がりを持ってしまうと、もう人間世界の時の流れと無縁ではいられないのだと思います。マスターは確実に歳をとっていきますし、またテレビで「探偵犬くんくん」の放映を順番通りに観るためには、やはり人間と同じ時間の中に身を置く必要がありますので。


契約を交わした正式なマスターでなくても、今回の菊や坊ちゃんみたいに薔薇乙女を受け入れ求めてくれる人がいれば、どんな時代にもローゼンメイデンの居場所はあるのでしょうね(もしこの二人がいなければ、翠星石はこの時代でかなり浮いた存在だったと思います)。
tomo318i様へのお返事コメントを書いていて、なぜ自分は最初に一見ミスマッチな大正時代とローゼンメイデンとが妙にしっくりきたと思ったのか、その理由が分かった気がします。コメント下さり、本当にありがとうございます。
そして始まった新シリーズ『0-ゼロ-』は、やはりローゼンメイデンの根底的なテーマを踏襲している作品なのだなあと改めて感じました。




▼ tomo318i さん -URL- のコメント #- | 2016.04.04 18:20 [ 編集 ]


「押絵と旅する男」を読んでみました。

オマージュと言うか・・・かなりそっくりですねぇ。坊ちゃんが真紅に恋い焦がれるあまり「僕を人形にしてくれ」とか言い出さなきゃいいんですけど。




▼ tomo318i さん -URL- のコメント #- | 2016.03.27 15:24 [ 編集 ]


今回は本当に不思議な事ばかりで始まりましたよね。

特に翠星石が現在置かれている状態は特殊すぎます。鞄無し、精霊無し、記憶無しですから。何かしら「事故」の可能性も結構高いですよねぇ。それを起こしたのが翠星石なのか、それとも二代目ローゼンとしてのジュンなのかは分かりませんけど。


nのフィールドが異なる時空間の間を移動する手段になり得るから、ローゼンメイデンには私たちにとっての過去も現在も関係ない・・・。

やっぱりみんな似たようなことを考えるんですねぇ。

私の場合、どうしてもこの手の設定で思い浮かぶのがエルシャダイのルシフェルなんですよ。
「私にとってはつい昨日の出来事だが
君たちにとっては多分明日の出来事かも知れないな」
というアレです。

90年前に見えるこの物語も、明日の事かもしれませんね。














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ローゼンメイデン0-ゼロ- 第2階
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2016.04.18 08:12 | 山とスキーとローゼンメイデン

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