山とスキーとローゼンメイデン

登山、スキーについてのブログです。 また、ローゼンメイデンについての記事も書いています。

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ローゼンメイデン tale22

TALE22 / ひとつだけ

僕が僕の意志で、僕の力で変えてやるんだ


■ 生命を宿す時計

 「さあマスター、命令を――」

庭師の双子はジュンに、望んでいる方向を指し示すように求める。

ジュンは戸惑う。
元の世界に戻りたいとは願った。しかし、戻ってから何をしたいのか、自分でもまだわからない。


 「貴方の心のままを、ひとつだけ口にすればいい」

真紅は、ジュンに自らの気持ちと向き合うように助言をする。

 「考えて、答えを導いて」


ジュンは考える。
僕が本当に心から叶えたいと願うものは――

疎外感を味わっていたジュンは、世界そのものが変わってくれることを願っていた。
そして、雪華綺晶を巻かない世界に呼び寄せてしまった。
世界を変えて欲しいという願望は、多分、今でもどこかに残っているはずだ。

しかし……。


 「舞台だ、舞台を元通りにしたい」

と、ジュンは言った。

 「それが一番で、それが唯一だ」


ジュンは元の世界に戻って、劇団のみんなで作った舞台を、最後までやり遂げたいと思ったのだ。


 「…元ある形に、それがマスターの願い…」

双子の庭師、翠星石と蒼星石は力の向きを定める。
世界を元の姿に戻すという方向に。


 「いくよ、翠星石」
 「はいです」


  健やかに伸びやかに……
  芽を吹かせ、若葉を萌やし
  緑の梢を茂らせて…
  光の示す方向へ――!

翠星石が、夢庭師の如雨露で木製の時計に生命を吹き込む。
時計に生命の息吹が宿り、筐体から新緑が伸びる。


 「仕上げは頼んだですよ! 蒼星石」
 「うん」

双子の庭師の息はピッタリだ。
最後に、蒼星石が振り子に絡みついた新緑を切って仕上げる。


ボォーーン


 「動いたッ!! やったぞ!!」

大時計は、ついに動き出した。



■ 谷底

まいたジュンは、いら草で縄を結い続けている。
だが、どれくらい結ったのかは自分でもわからない。そもそも、深い谷底までの距離もわからないのだ。
ゴールの見えない作業は、人を消耗させる。

しかも、傍らにいるラプラスの魔は、ちょっかいを出してくる。

 「はてお耳を畳んでおいでか、坊ちゃん」


ジュンは、ラプラスの魔を相手にしないことに決めたようだ。
集中して作業を続けようとする。


 「ジューーーン」


突然、大声で呼びかけられたはずみで、ジュンは持っていた縄を離してしまう。
縄はそのまま深い亀裂に吸い込まれ、底まで墜落していく。


 「嘘だろおおお」

手を傷めながら時間をかけて作っていたいら草の縄は、こうして失われた。


 「やーーと見つけたかしらっ」

声の主は、金糸雀だった。


 「大変なのかしら!! 今すぐここから移動しないと…」
 「大変はこっちだ、ばかなりあー!!」
 「ば!?」


落としてしまった縄を嘆いてばかりもいられない。
だが、普段は傘を使って空の散歩を楽しむ金糸雀も、この亀裂に降りていく勇気はないようだ。

ふと、谷底で何かチカチカと光っているのが見えた。


 「あれは…人工精霊?」

谷底で、人工精霊がヨロヨロと飛んでいる。



■ 決意と拒絶

時計は動き出した。
しかし振り子の動きが、どことなくぎこちない。


蒼星石が何かに気がつく。

次の瞬間、白い茨が時計の中の暗闇から伸びてきた。
その茨に、蒼星石は絡みとられてしまう。

時計の中にいたのは、雪華綺晶だった。


水銀燈が羽を飛ばして茨を断ち切り、蒼星石を救う。
蒼星石のローザミスティカを正式に譲渡される約束になっているのに、雪華綺晶に横取りされるわけにはいかない、と水銀燈は言う。

 「蒼星石はもう、この水銀燈のものよ」

水銀燈は、時計の中の雪華綺晶に告げる。


 「約…束?」

と、蒼星石と水銀燈との間で交わされた取引きを知らない翠星石は言う。

 「ど…どういう事…」


なにか嫌な予感を覚える翠星石。


 「ちがう! 僕の人形だ」

そう言ってジュンは蒼星石に駆け寄り、絡みついた白い茨を振り払う。

 「今のところはまだ僕がマスター、だろ?」


嘘をついてまで翠星石を心配させまいとした蒼星石、彼女の行為を無駄にしないために、ジュンはことさらに蒼星石の所有権を主張した。

蒼星石もその心遣いに気がつき、自分のマスターの優しさを嬉しく思うのだった。


 「雪華綺晶! そこにいるな?」

時計の中の雪華綺晶に向かってジュンは言う。

 「よく聞け、僕はお前のマスターじゃない」


雪華綺晶は、マスターではないと断言されてショックを受ける。

 「マスター… なぜ…? マスター… 私は…貴方」

貴方の望むままに、世界を作り変えてさしあげたいのに…。
雪華綺晶は涙を流しながら、ジュンに訴える。


 「いらない」

ジュンは、きっぱり拒絶する。

 「もう、そんなもの欲しくない」


  誰かに与えられるんじゃ意味がない、
  僕が僕の意志で、僕の力で変えてやるんだ。


ジュンは上気して、自分の決意の固さを明示する。
雪華綺晶の誘惑を振り払うため、他の何かに憑りつかれてしまったような印象さえ受ける。


そして、泣いている雪華綺晶に言い放つ。

 「お前はいらない…!」




次回は15号(3/11発売)掲載予定


【 今回の概要 】
双子の庭師の力で、ついに大時計が動き出す。回復しきっていない雪華綺晶だが、それでもボロボロの体で世界が戻ることを阻止しようとする。ジュンのために世界を作り変えたいのだという。その申し出を、ジュンはきっぱりと拒絶する。



【 今回の考察 】
ジュンが自分の力で選択肢を選び取っていく、という決意をはっきりと宣言する。tale17で決意したことだが、今回口に出すことで、自分の中でも明確な形をとったに違いない。
それはジュンにとって大きな進歩かもしれないが、やや焦りすぎていて独善的すぎる観があるのも否定できない。phase41で、まいたジュンが図書館で巴から指摘されたことと同じだ。自分に救いを求める声に耳を傾けることを忘れている。雪華綺晶は、ジュンに助けを求めている。ボディ(=雪華綺晶にとっての居場所・自分の世界)を与えて欲しいと思っているのだ。自分の輪郭を保てず居場所がないと感じている雪華綺晶は、ジュンの世界を変えることで、そこに自分の存在を見出そうとしていたのかもしれない。
今のジュンが雪華綺晶を拒絶するのは当然だ。だが結果として、かつて自分が感じていた居場所のない感じや疎外感を、雪華綺晶に与えてしまったことになる。
巻かないジュンと巻いたジュン、巻かないジュンと雪華綺晶、新しいローゼンメイデンは、この対比を軸に展開されていくようだ。

まいたジュンと金糸雀が見た谷底で光るものは、雛苺の人工精霊ベリーベル。
真紅本体の中にある雛苺のローザミスティカに付き添っていたが、おそらく縄が落下してきたことに気がつき、外に出て来たのだろう。真紅本体救出の鍵になるのかもしれない。

翠星石は、蒼星石が嘘をついていることに気がついてしまったようだ。水銀燈と蒼星石の人柄から考えれば、2人の間に成立した取引きのおおよその内容は察知がついてしまうのだろう。
水銀燈が蒼星石は自分のものと言ったとき振り返る蒼星石の顔と、その次のコマの、おおよその事情を察してしまった翠星石の顔がなんとも言えない。ローゼンメイデンは絵の線が細かいから、表情の描写が秀逸だ。

◆金糸雀の呼び方
・かしら先生 ← まかなかった世界のジュン
・ばかなりあ ← まいた世界のジュン



【 その他 】
ローゼンメイデンコミックスとTシャツのお知らせ


ローゼンメイデンのコミックス第3巻は、2010年2月19日(金)発売。
ローゼンメイデン 3 (ヤングジャンプコミックス)(Amazon)

ローゼンメイデンのコラボTシャツ発売決定。カエルみたいな色。
サイト: MANGART BEAMS T



<TALE 22>
掲載: 週刊ヤングジャンプ 2010年11号 / 2月10日(水)発売
ページ数: 22ページ
登場人物: まかなかったジュン、まいたジュン、水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石、真紅、雪華綺晶、ラプラスの魔、ベリーベル

ヤングジャンプ 2010年 2/25号 [雑誌] (Amazon)



[ 関連ページ ]
前回 TALE 21
ローゼンメイデン原作の全話レビュー
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